メーカーと海外の卸売業者や小売りをつなぐBtoB(企業向け)のマッチングプラットフォームを展開するラクーンコマース(東京・中央)は、2021年1月にライブコマースを活用したオンライン展示会を実施。参加企業の1社は売り上げを約7倍に増やした。BtoC(消費者向け)の領域では大丸松坂屋百貨店が催事イベントをクラウドファンディングサービス「Makuake」上で開催。出展者は目標額の10倍超を集めるなど、20年に急速に進んだイベントのオンライン化が成果を出し始めている。
「初めましてリュウコドウと申します。本日はかわいらしい和雑貨を紹介したいと思いますのでよろしくお願いします。まず今年、出したのは慶寿の招き猫です。ちりめんの生地を貼り付けて作ったものです。赤色の生地に金や銀の糸を織り込んでいるのでとても華やかです」
動画投稿配信サービス「YouTube」で始まったライブコマースに登場したのは、和雑貨を取り扱うリュウコドウ(京都市上京区)だ。担当者はまねき猫の雑貨などの新商品を次々と紹介していく。視聴者は海外の小売店や卸売業者のバイヤーだ。EC支援事業のラクーンコマースが展開する、国内メーカーと海外の卸売業者や小売店を結び付けるプラットフォーム「SD export」の登録会員である。日本語の説明をラクーンコマースの担当者が中国語に翻訳して、視聴者に伝える。このライブコマース実施後、SD exportを通じたリュウコドウの売り上げは約7倍になったという。
「新型コロナウイルス感染症の影響で、海外のバイヤーは来日できなくなっている。ある大型の新商品展示会には海外から毎年1万人超が来場するが、20年は数人だった」。ラクーンコマースの元健一郎グローバル戦略部長はこう危機意識をあらわにする。
展示会は卸売業者や小売店は新商品を発掘し、メーカーは自社の商品の強みや特徴を来場者に直接伝えて受注につなげる絶好の機会だ。メーカーは展示会で先行して一定規模の受注を取れれば、在庫リスクも低減できる。ところが開催そのものが難しい。開催できても海外のバイヤーは来日がかなわない。両者にとっての取引の機会が失われた。
この課題解決を目指して、ラクーンコマースが実施したのが、SD exportを生かしたオンライン展示会だ。SD exportはサービス上に商品を掲載して売買できるだけでなく、輸出手続きや検品、代金回収など、取引をトータルでラクーンがサポートする。出展メーカーはサービスに登録し、商品情報を登録するだけで、海外企業との取引が可能になる。受注後、ラクーンの倉庫に商品を納品するだけだ。「日本市場が縮小に向かう中、メーカーの海外進出需要が高まっている。出展企業数は前年比2倍超で増えている」(元氏)。
SD export の出展企業数は1600社超で、約70万点が出品されている。バイヤーサイドでは134の国と地域の約7万5000社が登録している。ラクーンコマースはこれまでも仲介役として両者のマッチングを手掛けてきたが、新たな価値づくりとしてオンライン展示会に挑んだ。展示会は日本製品のニーズが高く、海外サイトにアクセスしやすい香港、台湾、マカオを対象に21年1月26日~2月15日にかけて実施した。
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