活況のD2C市場が2021年、さらに勢いを増す。D2Cブランドの構築支援サービスが続々と誕生し、先行するアパレルや化粧品の領域だけではなく、雑貨や日用品にまでその波が広がりそうだ。全国の職人をネットワーク化するニューワールド(東京・港)や、クチコミを誘発する梱包材の開発を手掛けるshizai(東京・中央)などに、D2C市場の展望を聞いた。
アパレルを中心に急激な勢いで拡大を続ける「D2C(Direct-to-Consumer)」市場。自ら企画・製造した商品を、卸売事業者や小売店を介さずに、直接消費者に届ける業態で、日本では2019年ごろから拡大の兆しが出始め、コロナ禍下でのオンライン化の波に乗ってさらに伸長している。売れるネット広告社の調査によれば、20年の「デジタルD2C」(ネットメディアを通じて自社ブランドの商品を消費者に直接販売する事業)の市場規模は、19年比で109%と2桁近い伸びになっていると推定している。
21年は、この流れがさらに加速する。後押しとなるのが、D2Cブランドの立ち上げ支援サービスの多様化だ。
D2Cブランドは、前述のように自ら企画・製造した商品を直接消費者に届けるモデル。店舗を持たないため、InstagramやTwitter、TikTokなどのSNSメディアを駆使し、情報発信を行い、消費者にアプローチするのが基本だ。そのため、著名人やインフルエンサーなどが、ファン向けにD2Cブランドを立ち上げるケースも多い。
インフルエンサーなどの個人や小規模な企業がブランドを持つのに最大の障壁となるのが、製造面だ。つくりたい衣服やファッションアイテムのイメージはあっても、技術力を持ち、小ロットからの生産に対応できる工場を探すのは難しい。
そんな中、縫製工場や資材メーカーと連携し、服を作りたい人とマッチングする仕組みを持つシタテル(熊本市)など、アパレル領域では支援プラットフォームが離陸。多様なブランドが登場している。また、化粧品領域でも、サティス製薬(埼玉県吉川市)のように、D2Cスタートアップを支援する企業も躍進している。
だが、雑貨や日用品に関しては、D2Cの立ち上げ支援があまり進んでいなかった。今回、そこに切り込むのが、ニューワールド(東京・港)だ。
コロナ禍でストーリーコマースが躍進
ニューワールドは、「日本のものづくり」をテーマに、全国のこだわりの日用品や雑貨を扱ったECサイト「CRAFT STORE」を運営する。掲載する商品はすべてスタッフが試し、その商品の背景にあるストーリーまで豊富な画像や映像、文章で表現する“ストーリーコマース”と呼ばれる新機軸のサイトだ。コロナ禍による巣ごもり需要の拡大や、移動自粛の影響を受けた生産者をサポートするために始めた「オンライン陶器市」が人気を集め、20年8月の販売額は前年同月比で583%と、急拡大している。
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