多摩美術大学(以下、多摩美)は、美大でありながら今後はビジネススクールを計画していることを明らかにした。デザインとビジネスの両スキルを持つ人材育成が狙い。その流れの一環で、2020年9月からはデザイン経営を実践しようとするビジネスパーソンを対象に「多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム」(TCL)を開講している。建畠晢学長に聞いた。

建畠 晢(たてはた あきら)氏
多摩美術大学学長
1972年早稲田大学文学部卒業。新潮社「芸術新潮」編集部、多摩美術大学教授、国立国際美術館館長、京都市立芸術大学の学長を経て、2015年から現職

多摩美はTCLを2020年9月に開講しました。20年度は9~11月にかけて初めて実施し、21年度は第1期が5~7月、第2期は9~11月に開催する予定と聞きます。20年度のTCLでは参加者が6チームに分かれてワークショップを行い、社会課題を解決するビジネスプランや新商品の開発などの企画に取り組んで、最後にプレゼンテーションをしました。まずは初めて実施したTCLの感想をお聞かせください。

建畠 どのチームの発表も、想像以上にクオリティーが高かった。一見、奇抜な発想であってもリアリティーがあり、どれも充実した内容でした。プレゼン内容はもちろん、発表後に行う受講生同士のディスカッションや質疑応答も盛り上がっていたことも印象的でした。本質を突く質問をしたり、実装に向けたアイデアや意見を述べたり、受講生の意識の高さも感じられました。

 印象に残ったプレゼンの一つが、空き家や使われていない土地を地域の人たちが共同で管理し、避難所を兼ねたコモンズとして活用するプロジェクト。リアルな提言で、今後の展開が期待できる内容でした。あと、2週間で消える“タトゥー”を「自分が本当にやりたいことを考える目印にする」という斬新な企画もありました。タトゥーの新たな使い方提案で、体験してみたくなるストーリーもある。独創的なアイデアですが、商品化できそうな内容だと思いました。

多摩美がビジネスパーソンにデザイン経営を教える目的は何でしょうか。

建畠 大学の役割は、教育と研究、創作活動の拠点であることです。それと同時に、学内はもちろん、一般市民や行政、企業、他大学などとの交流の場となる、ハブ機能も重要な役目だと思っています。TCLもその一環です。

 TCLはデザイン経営をビジネスの現場で実装することを目標に掲げていますので、修了後のアフターケアも充実させていく予定です。実際、学んだことが各自の仕事でどんなふうに生かされているか、修了してから3カ月後に再度集まって発表する場も設けています。TCLが交流のハブとなり、同じ期に学んだ受講生同士だけではなく、その後に受講される方々ともつながっていけることが理想です。今後、TCLが触媒のようになって、新しいことを生みだしていけたらいいなと思っています。

 一方、多摩美の大学院ではデザイン系のビジネススクールも計画しています。TCLとビジネススクールとは別軸ですが、デザイン経営をビジネスに実装するための教育という点は共通しており、目指す方向性は非常に近い。そのため、TCLの経験は、きっとビジネススクールにも活用できることがあるでしょう。

 TCLを開講して分かったのは、デザイン経営に対する関心が想定以上に高いこと。TCLが期待していた参加者は、30代から40代の中堅クラスのビジネスパーソンでしたが、ほぼ狙い通りの方々から応募がありました。業種もさまざまで、ベンチャーから大企業まで幅広く、行政の方々の参加も少なくなかった。第2期も多くの応募がありました。

多摩美のビジネススクールは、いつごろを目指しているのでしょうか。

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