コロナ禍でイベント中止が相次ぎ、新規顧客の開拓に制約がかかった企業は多い。ブラザー工業の販売子会社、ブラザー販売は独自のイベントサイトを開設。さらに位置情報データを活用し、過去の関連イベント来場者に広告を配信する手法でクリック率を倍増させるなど成果を出した。
ブラザー販売の企業向けマーケティング部門が扱う製品は、主にビジネス向けプリンター。主力のレーザープリンターのほか、インクジェットプリンターやラベルプリンターなどがある。
新型コロナウイルス感染症が拡大する以前は、新規の顧客獲得において主力チャネルはリアルの場でのイベントだった。小売り、製造、物流、医療、金融など業界ごとに開催される展示会にブースを出展。名刺を集めるか、来場者のバーコードをコンパニオンが読み取ることで、見込み顧客のリード(連絡先などの情報)を獲得する。その後、オウンドメディアに誘導あるいは、無料の製品貸し出しキャンペーンに案内するといった形で、ナーチャリング(見込み客の育成)をしてきた。
イベントの半数が中止に
「これまで年間で最低6回はイベントに参加していた。2020年は10回ほどの出展を予定していたが中止が相次ぎ、リード獲得の見通しがつかなくなった」と話すのはブラザー販売ビジネスソリューション事業部の今村綾子氏だ。政府が1回目の緊急事態宣言を発出した20年4月、対応策として急きょ取り組んだのが、独自のオンライン展示会サイトだ。
「20年4月に入った段階で新型コロナウイルス感染症の影響は長引くと判断した。やるやらないと議論していては遅れてしまう。予算をためておいても仕方ないし、何が成功するか分からないのでとにかくやろうと意気込んだ」(今村氏)と振り返る。SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型のWebサイト構築サービスやチャットボットを導入することで、急ピッチに準備を進め、20年5月にはオンライン展示会サイトのオープンにこぎ着けた。
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