AI(人工知能)を活用したマーケティング支援を手掛けるInsight Tech(インサイトテック、東京・新宿)は、生活者が感じる不満のデータをAIで分析、評価するサービス「IDEAI(アイデアイ)」を2021年1月18日に開始した。あまたあるデータから、商品開発のヒントとなり得る有益な意見を抽出することができる。変化が激しい世の中で、消費者起点での商品企画プロセスのDX(デジタルトランスフォーメーション)をサポートする。

インサイトテックは、生活者が感じる不満のデータをAIで分析、評価するサービス「IDEAI」を開発、提供開始した
インサイトテックは、生活者が感じる不満のデータをAIで分析、評価するサービス「IDEAI」を開発、提供開始した

 アイデアイはさまざまなビッグデータから、アイデア創発につながるデータを抽出するAIを使ったサービス。単語ではなく、主語述語によるフレーズ単位でテキストマイニングし、会社にとって有望か、意見として貴重かどうかをAIが判別するのが特徴的だ。

 同社は消費者が投稿する世の中の不満を、1~10円相当のポイントで買い取るプラットフォーム「不満買取センター」を運営している。お題やテーマなどはなく、あらゆる商品に対する不満や職場の人間関係など、バイアスのかからないさまざまな意見が集まるのが特徴的だ。2021年2月末時点で会員は52万人、収集した不満データは累計2000万件以上に及ぶ。

 集まったデータは、商品開発やマーケティングに生かしたい企業に販売もしている。あまたあるデータから顧客企業が求める不満データをピックアップして、そのデータをAIで分析、マーケティングリポートにまとめるという形だ。例えば食品メーカーがとある商品の改良をしたいとき、その商品や業界周辺の不満をデータから抽出し、AIで解析した上で同社のリサーチャーがインサイトを見つけ提案する。アイデアイはそのようなプロジェクトで得られた知見を踏まえて開発されたサービスだ。

 アイデアイでは不満買取センターのデータの他、SNSなどのオープンデータ、クライアント企業が保有するVOC(ボイス・オブ・カスタマー、顧客の声)など、あらゆるテキストデータを分析にかけることができる。あまたあるデータをAIが分析し、レアかつ有望な意見や行動を絞り込んでくれるのだ。従来のように調査リポートを待たずとも、商品企画のヒントを得られる。

レア度と有望度でデータを評価

 データの中からアイデアの種を見つけるために、2軸で評価するのが特徴的だ。1つは「新奇性」。テキストデータに含まれるレアな意見や様相をAIが見つけ、意見一つひとつのレア度を評価する。レア度の高い意見の中には、イノベーションの種になり得る貴重な意見もあるだろう。今までなかった新しい生活者の行動や気持ちの変化をいち早くピックアップできるというわけだ。

 新奇性の軸ではAIを使って、主語と述語などのフレーズがレアであるかどうかを評価している。例えば飲み物の不満において、「ホットのミネラルウオーターが自販機にないのが不思議。子どもがミルクを欲しがったときに便利なのに」という意見があったとする。「ホット」「ミネラルウオーター」といった単語はそれほどレアではないが、「ホットのミネラルウオーターがない」というフレーズは珍しいだろう。主語述語などフレーズに着目して、消費者がどういう気持ちを持っているのか、どういった行動をしているのかを文法的に理解する文章解析エンジン「アイタス」によってレア度を測定している。

 もう1つの軸が「有望度」だ。この軸は、各社にとって大切と考えることを自由に設定できる。

 例えば、「食の未充足」をテーマに設定する企業の場合、食に対する満たされない思いや不満を探すためのAIを構築。「子どもの離乳食の調理に使える冷凍食品がなくて困っている」「湯気が出ている鍋に調味料を振りかけると、湿気で調味料が出にくくなってしまう」といった不満をAIが抽出し、アイデアのヒントを発掘できる。

 あらかじめどのデータが有望かを分類し、教師データを作成。AIに学習させることで、それ以降AIが自動的に有望度を判別する仕組みだ。

アイデアイでは、「新奇性」と「有望度」の2軸でテキストデータを分析する
アイデアイでは、「新奇性」と「有望度」の2軸でテキストデータを分析する

商品開発のプロセスをDX

 アイデアイ開発の背景には、3つの企業の困り事があると、インサイトテックCEO(最高経営責任者)の伊藤友博氏は話す。1つ目が、PDCAの高速化だ。これまではじっくりと腰を据えて調査リポートなどを熟読した上で商品企画をするといった、決められたことを着々とやっていく商品開発のプロセスが多かった。近年は変化が速く不確実性が高いため、現場ではスピード感が求められているという。分析データをマーケティングリポートにまとめるよりも速いスピードで、厳選した生の声を得られるのは企業にとって大きいというわけだ。

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