創業メンバーは全員現役東大生。しかも全員、筑駒(筑波大学付属駒場中学・高校)の同級生。王道コースを歩み続けてきた秀才たちが、コロナ禍に立ち上げたスタートアップがYondemy(東京・千代田)だ。同社の「ヨンデミーオンライン」は、「AI司書」が子供に適正な本を薦め、読書を促すサービス。子供たちの読解力の低下に真っ向から立ち向かい、「日本中の子供たちを読書好きにしたい」と夢を語る。
東京・渋谷の図書館。足しげく通うのは、日本の最高学府・東京大学の現役学生たちだ。さぞ難しい書物を読みふけっているのかと思いきや、その手に持っている本をよく見ると……。
「手分けしてですが、全員で1000冊以上の絵本や児童書を読みまくりました」と語るのは、ヨンデミーオンラインを運営するYondemy(東京・千代田)CEO(最高経営責任者)で東大経済学部3年の笹沼颯太氏。「毎週のように子供向けの本ばかり借りまくっているので、おかしな人たちと思われているかもしれません」と苦笑する。
ヨンデミーオンラインは、一言で言うと「子供向けの選書サービス」。正しくは、5~14歳を対象とした、月額定額制の完全オンライン読書教育の習い事サービスだ。親世代の子供時代に比べて、今の子供たちの周囲は誘惑であふれている。YouTubeやゲーム、アニメなどに時間を奪われ、活字を読む機会はかなり減っている。
『AI vs.教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)で「今の中高生の3分の1は簡単な文章が読めない」と指摘されている通り、子供たちの読解力不足は深刻だ。PISAテストという国際学力調査でも、科学や数学の分野では健闘しているものの、読解力の順位は大幅に低下。忙しさのあまりついつい子供にスマホやタブレットを渡し、YouTubeに“子守”をさせてしまっている親も多いだろう。
子供の好みを探って選書する「AI司書」
読書が苦手と感じている子供も多いが、それには2つの理由があると笹沼氏は指摘する。1つは、親が読ませたい本と子供が読みたい本が違うことによって、「本が子供の好みに合っていない」という点。もう1つが、例えば「3~4年生向け」と書かれていても、3~4年生なら誰でも読めるわけではないということ。「N年生にお薦めのブックリストというのは、図書館に来るような子、ある程度読める子供向けになっている」(笹沼氏)。その学年でも、「難しすぎる」と感じる子供も多いのだ。裏を返せば、この2つのミスマッチをなくし、好みに合った適正な難しさの本を渡せば、子供の読書嫌いはなくせる可能性が高い。
そこで登場するのが、ヨンデミーオンラインが独自に編み出した「AI司書」だ。用いているのは、ディープラーニングの一つ手前の技術「ルールベース」。ルールをAIに教え込むことで、その範囲での推論を出させるというものだ。
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