飲食店の店内利用の禁止に加え、夜間の外出禁止令が出たままのフランス・パリ。街では飲食店の閉店も目立ち始めた。美術館などの芸術施設も閉鎖を余儀なくされている中、芸術作品を求めてパリ市民が向かうのが教会だ。コロナ禍の下で起きた人々の行動の変化を現地からリポートする。

パリ1区にあるサントゥスタッシュ教会は、美しい外装の教会として有名。美術作品も多数、飾られている
パリ1区にあるサントゥスタッシュ教会は、美しい外装の教会として有名。美術作品も多数、飾られている

 美食の国、芸術の国、フランス。コロナ禍の下ではそのアイデンティティーが霧の向こうに押しやられ、法令によりレストランも美術館も息を潜めている。

 パリの街を彩っていたレストラン、カフェ、ビストロは、国が2度目の開店禁止を命じた2020年秋からテーブルのほこりが厚さを増すばかり。この機会に改装工事なのか家賃が払えなくなったのか、店を閉じる姿が目につき始めた。国は辛うじてテークアウトの営業は認めた。「コーヒー1ユーロ」「持ち帰りメニューあり」といった手書き看板を掲げ、入り口だけで営業を細々と続ける店もある。

レストランやカフェ、バーなどは20年10月末から店内営業が禁じられている。休業補償もあるが、閉店する店も目立ち始めた
レストランやカフェ、バーなどは20年10月末から店内営業が禁じられている。休業補償もあるが、閉店する店も目立ち始めた
テークアウトで辛うじて販売を続けるカフェも
テークアウトで辛うじて販売を続けるカフェも

 一方で、バス、メトロは意外にも毎日人がぎゅうぎゅう詰めで、デパートやスーパーマーケットは買い物客でにぎわう。そんな状況にあるものの、劇場や映画館、オペラ座、予約制で入館人数を制限できるはずの広々とした美術館やアートセンターなど、芸術施設は今なお開館が禁止されている。レストランやカフェとは違い、芸術を楽しむ空間では基本的に会話は少なく、ただ静かに美に感動し、新しい何かに気づいたり、ほんの数時間の内なる旅をしたりする場所なのだが。

 芸術家にとって作品が発表できない(=人々と分かち合えない)ことは、口(表現の自由の末端)を無理やり塞がれているようなもの。ダンサーや歌手にとってリハーサルが止められ舞台を踏めないのは命とりであり、だからこそ彼らはこれらの場を再開するよう国に強く求め続けている。

 そして芸術に触れることが日常だった人々は、当初こそおとなしく無料でオンライン配信されるオペラやバレエを見たり(少し得した気分で)、購入以来本棚の飾りになっていた画集や写真集を久しぶりに広げたりしていたが、新型コロナウイルス感染症の流行の影響は思った以上に長く続き、物足りない気分に陥っている。

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