飲食店だけを対象とした広告ネットワークが誕生する。食材のオンライン受発注サービスを展開するベンチャー企業クロスマート(東京・中央)は2021年4月から、広告サービス「クロスオーダー販促」を始める。食品メーカーを対象としたサービスで、飲食店から広告経由で直接受注につなげられるのが特徴。サービス化に先駆けて広告主と取り組んだテストでは、一般的なネット広告と比較してCVR(成約率)が20倍超になったという。20年2月22日に複数社から2億7000万円の資金を調達し、新サービスの開発を加速する。

 クロスオーダー販促は、クロスマートが展開する食材のオンライン受発注サービス「クロスオーダー」を導入する飲食店向けに、メーカーが商品を提案し、受注につなげられる広告商品だ。この広告商品の詳細を説明する前に、まずクロスオーダーがどのようなサービスかご理解いただきたい。

 クロスオーダーとは飲食店の発注業務、卸売業者の受注業務をそれぞれ効率化するためのデジタルプラットフォーム。「食の領域でのDX(デジタルトランスフォーメーション)は飲食店予約や決済サービスなど、消費者サイドは進んでいる。一方、BtoB(企業向け)の領域は今でも用紙に記入してファクスなどでやりとりするのが主流」(クロスマートの寺田佳史社長)。卸売業者には毎日ファクスで数千枚の発注用紙が届く。これを人の手でシステムに入力しており、大きな負担になっている。デジタル技術でこの業務負荷を下げることを目指して開発した。

 サービスの主な導入先は食材の卸売業者だ。受発注には無料電話・メールアプリ「LINE」を活用する。クロスオーダーを導入した卸売業者は、同サービスのLINE公式アカウントに登録され、各社が取り扱う食材のリストもLINE上で一覧表示される仕組み。卸売業者は、取引先の飲食店にLINEを通じた発注の利用を促していく。

 飲食店はクロスオーダーのLINE公式アカウントに登録するだけで、すぐに利用できる。料金はかからない。発注する際に、取引先の卸売業者を選択すると食材リストがLINE上に表示されるので、必要な個数を入力してメッセージを送るだけで発注が完了する。

クロスオーダーは無料電話・メールアプリ「LINE」を活用して、卸売業者と飲食店の食材流通のDXを実現する
クロスオーダーは無料電話・メールアプリ「LINE」を活用して、卸売業者と飲食店の食材流通のDXを実現する

 卸売業者はLINE経由で送られた発注データを、クロスオーダーの管理画面上で飲食店ごとに確認できるため、受注情報の手入力が必要なくなる。ファクスを見逃して、食材を送り損ねるといった人的ミスも防ぎやすい。

 また、卸売業者はLINEを通じた販促機能も利用できる。クロスオーダーのチラシ作成機能を使い、用意されたテンプレートで食材のチラシを作って取引先の飲食店に配信できるのだ。例えば、賞味期限が近づいている食材を、急きょ個数限定で格安販売するといった案内もしやすい。従来はチラシを作り、食材の納品時に同梱物として配るといった手法が中心だったが、リアルタイム性に乏しく、効果測定もしにくかった。クロスオーダーなら思い立ったらすぐに案内できる上、配信店舗や受注履歴を管理画面上で把握できるため効果測定がしやすい。

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