日本発のクラウドサービスが、ゲーム制作の現場を変えるかもしれない。主役は、任天堂出身のエンジニアが立ち上げたスタートアップだ。ゲームの進行に欠かせない機能を数多く盛り込んだサーバーを提供し、自前でサーバーを運用せずともゲーム開発ができる環境を整えた。

Game Server Services(GS2)はゲームサーバーのクラウドサービスで世界展開を狙う
Game Server Services(GS2)はゲームサーバーのクラウドサービスで世界展開を狙う

 自らがアバターとなってライバルアイドルと対戦し、ランキングを上げてトップアイドルを目指す。2020年12月、全国2000店舗以上に導入されたバンダイの最新アーケードゲーム「データカードダス アイカツプラネット!」。このゲームの開発を支え、動かしているのは、Game Server Services(ゲームサーバーサービス、東京・世田谷、以下GS2)という名の小さなスタートアップだ。

 GS2は、ゲームの開発でよく使われる定番機能を組み込んだ汎用型のゲームサーバーを提供している。利用すれば、自前でサーバーを運用することなく、ゲームを開発して配信できるようになる。

 汎用型といっても、守備範囲はかなり広い。ゲームのストーリー進行やイベントのスケジュール管理、プレーヤーのアカウント管理から、ガチャの抽選確率、経験値やレベルアップの処理まで。ゲーム上でクリアすべき課題「クエスト」では、挑戦できる回数に制限を加えられるし、レアモンスターが出現するかどうかも調整できる。「毎日クエストを10回クリアすれば、アイテムがもらえる」といった条件付きのミッションも導入可能だ。

 「マッチメイキング」機能を使えば、「盾役1人、回復役1人、攻撃役2人」といったパーティーでのオンライン対戦を難なくこなせる。キャラクターや所持金などの情報も管理しているため、不正に資産を増やしたり、機種変更時にデータが消失したりすることも防げるという。

レゴブロックのように機能を組み合わせる

 GS2はこうした機能をパッケージとしてそろえ、ゲームの開発者は使いたい機能だけを選ぶ。「レゴブロックのように組み合わせて形にしていく。組み合わせるにはある程度ナレッジ(知識)が必要だが、そこは我々もサポートする態勢を整えていく」とGS2の丹羽一智CEO(最高経営責任者)は語る。

 丹羽氏は任天堂とセガで計10年間、ゲームサーバーの開発や運用を担った後、16年9月に起業した。正式にサービスをリリースしたのは20年2月。それまではひたすら開発に専念した。

 「世の中にあるすべてのゲーム規格に応えられる汎用的なゲームサーバーは、並大抵の努力ではつくれない。これまでの開発の経験から、完成までに3~4年はかかると思って、その通りにつくってきた」(丹羽氏)

 例えば、ガチャ一つとっても、世の中にはさまざまな仕様がある。「1回だけではなく、10回連続で引く10連ガチャがあり、10回引けば、そのうち1個はレア度が高いキャラクターが確定で出るガチャもある。引けば引くほど、強いキャラクターが出る確率が上がるステップアップ式のガチャもある。そのすべてを実現するにはどうすればいいかと検討しながら、1個ずつ工程を重ねていった」(丹羽氏)。並行して負荷テストも繰り返し、1秒間に10万リクエスト超のアクセスをさばく安定性も確保した。

 ゲームサーバーを自社で開発するにはコストがかかる。開発を外部委託したとしても数百万~数千万円の初期費用がかかり、ゲームをリリースした後もサーバーの台数に応じて監視費用などの固定費がかさむ。

 GS2は初期費用や固定費なしの従量課金制で、アクセス数に比例して支払額が決まる。ゲームサーバーの機能を1回呼び出すごとに0.02円を徴収するのが基本プランで、導入側は高額なサーバー開発費はもちろん、保守運用にかかる人件費も節約できる。サーバーの運用や管理に詳しくなくても短期間でゲームを開発し、なおかつ「ゲームを面白くする」という本来の目的に注力できるのだ。

GS2のゲームサーバーを使えば、ゲームの開発期間を短縮し、開発費も削減できる
GS2のゲームサーバーを使えば、ゲームの開発期間を短縮し、開発費も削減できる

マイクロソフト、アマゾンに挑む「メジャーを取る」

 丹羽氏の分析では、競合企業は世界に2社しかない。Playfab(プレイファブ)とGameSparks(ゲームスパークス)だ。前者は米マイクロソフトに、後者は米アマゾン・ドット・コムにそれぞれ買収された。GS2はマイクロソフトやアマゾンに挑む小兵という構図になるが、死角は十分あるとみる。

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