SBIグループが若年層の獲得を目指して設立したSBIネオモバイル証券(東京・港)が、好調に口座数を増やしている。2021年1月、開業(19年4月)から1年9カ月で、当初の目標だった50万口座を達成した。Tポイントで株投資ができるなど特徴あるサービスに加え、初心者に分かりやすいUI/UXやマーケティングの工夫などが、目標達成を後押しした。

SBIネオモバイル証券のWebサイトのトップページ。投資の初心者を狙って、「Tポイントを使って株が買える」というメッセージを伝えている
SBIネオモバイル証券のWebサイトのトップページ。投資の初心者を狙って、「Tポイントを使って株が買える」というメッセージを伝えている

 dポイントで投資できる「日興フロッギー」を提供するSMBC日興証券や、楽天ポイントで投資できる楽天証券、LINEポイントで投資できるLINE証券のように、ポイントを株投資などに使えるサービスを展開している証券会社は、SBIネオモバイル証券以外にもある。だが、SBIネオモバイル証券は、2019年4月の開業から1年9カ月で開設口座数50万を達成した。初心者、それも20代の初心者を徹底して狙うという作戦が奏功したからと言ってよい。

 「20代に最も支持される証券会社を目指す」。SBIネオモバイル証券の小川裕之社長は、同社のミッションをこう話す。なぜ20代を狙うかといえば、若年層、つまり初心者のうちから投資をしてもらえば、長い目で見て、それが「資産の多くを貯蓄し、投資には振り向けない」という日本の消費者の態度変容につながり、主要顧客に育つ可能性が高いからだ。

 小川氏によれば、若年層の初心者に投資をためらわせる大きなハードルは3つある。「(投資するだけの十分な)資金がない」「損するのが怖い」「投資のやり方が分からない」である。そこでこのハードルをクリアするためにSBIグループが考えた手だてが、ポイントを活用した投資と株式取引単位の引き下げ、サブスクリプション型の手数料体系、商品の絞り込みと分かりやすいUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)、それに初心者だけを徹底して狙ったマーケティングの工夫だ。

サブスク型料金体系で手数料の負担感を軽減

 まずは共通ポイント「Tポイント」を運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)グループに声をかけ、CCCマーケティングと共同出資で18年10月にSBIネオモバイル証券を設立。19年4月から、Tポイントを使って株投資ができるサービスを始めた。

 提携する共通ポイントとしてTポイントを選んだのは、CCCグループが比較的オープンに提携を結ぶ独立系の事業者であることと、20代の国民の80%以上が年1回以上Tカードを利用し、Tポイントをためていたからだ(CCC調査による)。

 ユーザーは、消費によってため込んだTポイントを使って投資すればよい。加えて、売買できる国内株式の取引単位を、通常の100株単位から1株単位に変えた。ポイントを使えるうえに少額でも購入できるようにして、「資金がない」というハードルをクリアしたわけだ。

 また、ポイントはいわば天から降ってきた“もう1つの財布”だから、投資に使っても、貯蓄を取り崩して投資したときに比べ、損したときにユーザーが受けるダメージは少ない。さらに、月間売買代金が一定の額以内であれば何回取引しても手数料は定額というサブスクリプション型の手数料体系を採ったので、手数料ばかり取られる(=損している)というユーザーの思いも減らせる。この結果、「損するのが怖い」というハードルもかなり引き下げられた。

SBIネオモバイル証券の手数料(サービス料)体系
SBIネオモバイル証券の手数料(サービス料)体系
これまでの証券会社の多くは1取引ごとに定額の手数料、例えば250円を支払う必要があった。これに対してSBIネオモバイル証券では、月間の売買代金50万円までは、月額200円(税別)で何度でも取引が可能。さらに、2カ月で失効し、かつSBIネオモバイル証券のみで利用できる期間固定Tポイント200ポイントを毎月付与するので、50万円までの売買なら実質的なサービス利用料は無料になる

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 そのうえ商品を絞り込み、ユーザーが取引に使うスマートフォン向けアプリのUI/UXを、これまでの証券会社では考えられないほどシンプルに設計。これで「投資のやり方が分からない」というハードルもクリアできると踏んだ。

SBIネオモバイル証券の口座管理画面。保有資産の合計と現在使えるTポイントの数、それにピックアップ銘柄が順に表示されている
SBIネオモバイル証券の口座管理画面。保有資産の合計と現在使えるTポイントの数、それにピックアップ銘柄が順に表示されている