新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、博物館や美術館は入場制限や一部の展示閉鎖、営業時間短縮などを余儀なくされている。そこでしか買えないさまざまなミュージアムグッズには根強いファンがいるが、その販売にも影響が及ぶ。だが、逆境にめげずにネット通販を活用したり、会期に左右されずに通年売れるグッズを開発したりと、新しい動きもある。ミュージアムグッズの可能性を評価し、参入する企業も出てきた。
2020年4月、1度目の緊急事態宣言発令後、ミュージアムグッズ制作会社のEast(東京・千代田)は、特設のWebショップをオープンした。販売したのは国内巡回中に東京都美術館で中止した企画展「ハマスホイとデンマーク絵画」(20年4月30日にWebショップ開設)、愛知県美術館と神戸市立博物館で中止した「コートールド美術館展 魅惑の印象派」(20年6月10日にWebショップ開設)のミュージアムグッズだ。
Eastは、グッズの企画開発と店頭販売を担当。通常、企画展のグッズは会場内のショップ以外では販売許可が下りないが、Eastは各展示関係者と協議してオンラインのWebショップを開設。6月30日までの期間限定で販売したところ、開始早々品切れとなった。また、一部増産した商品もあったという。
最終日にはインスタライブも開催し、数百人が集まった。ライブ実施後、閉店予定の23時59分を過ぎてもサイトの閲覧者や購入者が絶えず、翌日の朝まで開店時間を延長したというエピソードもある。
Eastとインスタライブを共催したミュージアムグッズ愛好家の大澤夏美氏は、「ここ5~6年で、美術展の大型企画が首都圏で増え始めた。グッズの力を借りてSNSで話題を盛り上げ、展示に足を運んでもらうきっかけにする動きが出てきたが、コロナ禍でそれもできなくなってしまった」と話す。
水族館の職員と企画会社が共同開発
長引くコロナ禍で、短期間で一気に集客し、ミュージアムグッズを販売する従来の定石が通用しない。そこで、企画展に頼らずに、各館のコレクションや所蔵物から面白いグッズを生み出すことで、継続的なファンの獲得につなげようとする動きもある。
山形県鶴岡市の加茂水族館は、通販大手のフェリシモと共同で常設のミュージアムグッズ「雨空を泳ぐクラゲの傘」を開発、20年7月に館内ショップで発売した。発売後は、傘を求める来館者でにぎわったという。同館では初回に3000本入荷し、数週間で完売。21年1月9日時点で計9303本を売り上げた。
フェリシモの通販でもこの傘の取り扱いを先行。20年4月から通販カタログや自社ECサイト、Twitterで商品の紹介をして予約を開始した。フェリシモ側でも新規客、既存客を問わず注文が舞い込み、生産が追いつかないほどの人気だったという。
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