2020年は、石橋貴明さんなど多くの芸能人がYouTubeチャンネルを開設して話題を集めた。芸能人と企業とのコラボ動画も増加中だ。今なぜ、芸能人がYouTubeを目指すのか。企業はどう組むべきか。多くの芸能人のYouTube進出を手がけるFIREBUG代表の佐藤詳悟氏に聞いた。

FIREBUG代表 プロデューサーの佐藤詳悟氏。1983年生まれ。大学卒業後の2005年に吉本興業へ入社し、ナインティナインやロンドンブーツ1号2号などのマネージャーを担当。15年に独立し、16年にはFIREBUGを創業
FIREBUG代表 プロデューサーの佐藤詳悟氏。1983年生まれ。大学卒業後の2005年に吉本興業へ入社し、ナインティナインやロンドンブーツ1号2号などのマネージャーを担当。15年に独立し、16年にはFIREBUGを創業

 「2020年に芸能人YouTuberがいきなり増えたと思われがちだが、実はかなり以前から芸能人による活用は進んでいて、YouTubeでも収益を上げられるようになっていた。そんな中、コロナ禍によって参入が加速したという状況」。そう語るのは、FIREBUGの代表で数多くの芸能人のYouTube進出を含めたデジタル戦略をサポートする佐藤詳悟氏だ。

 多くの芸能人がコロナ禍で大きな打撃を受けた。予定されていた番組は再放送に差し替えられ、制作される番組ではスタジオに入れる人数が少なくなるなど、出演機会が激減した。だが、それ以前に、19年にはインターネット広告費がテレビのそれを超えた(電通調べ)というように、テレビ制作の“原資”ともいえる広告の勢いには陰りも見えていた。そのため、制作コスト圧縮の圧力は年々高まり、芸能人がテレビのみで収益を上げることの限界もささやかれていた。一方、YouTubeをはじめとした動画広告は好調が続く。サイバーエージェントの調査によると、20年の動画広告の市場規模は2954億円、前年比114%に達する見通しと、コロナ禍でも右肩上がりだ。「YouTubeなどデジタル分野で収益を高める方法を積極的に考える芸能事務所も増えてきた」(佐藤氏)という。

FIREBUGは、エンタメを軸とした企業のマーケティング支援の他、タレントやアーティストなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)パートナーとして、デジタルを起点としたIP開発・ビジネスモデル構築を手掛けている。その一環として、よゐこ、キャイ~ン、北斗晶さんなど、多数のお笑いタレントや俳優・アーティスト、モデル・タレントのYouTubeチャンネルの企画・運用を行う
FIREBUGは、エンタメを軸とした企業のマーケティング支援の他、タレントやアーティストなどのDX(デジタルトランスフォーメーション)パートナーとして、デジタルを起点としたIP開発・ビジネスモデル構築を手掛けている。その一環として、よゐこ、キャイ~ン、北斗晶さんなど、多数のお笑いタレントや俳優・アーティスト、モデル・タレントのYouTubeチャンネルの企画・運用を行う

 「ディレクターなどを含めたチームでつくるテレビよりも、少人数で回せるYouTubeは、自分のやりたいこと、新しいことをやりたいと考える芸能人にとってはチャレンジしがいのある場。そこがしっかり収益を上げられる場として認識され始めたことで、参入の勢いが高まった」(佐藤氏)

有名なだけでは成功しない ファンのエンゲージメントがカギ

 YouTube投稿においての収益源は、大きく分けて3つある。まず、動画の再生数に応じて支払われるアドセンス(広告)。もう1つが企業とのタイアップ。そして、視聴者からのスーパーチャット(通称スパチャ)による課金、つまり“投げ銭”だ。

 ただし、有名な芸能人なら誰でもYouTubeで稼げるわけではない。キーとなるのは“エンゲージメント”と、佐藤氏は話す。

 例えば、SNSでフォロワーが100万人もいるのに投稿が数十人にしかシェアされない人。一方、フォロワーが1万人程度でも1000人にシェアされる人とでは、後者の方が“ファン度が深い”ことになる。YouTubeでいえば、後者の動画の方が定期的に何度も再生されたり、多くのコメントが付いたり、アクティブに動く。その結果、フォロワー以外の人にもレコメンド表示されやすくなり、多くの人に広がっていく可能性が高くなるという。「フォロワー数はいわゆる認知度の高さでしかなく、着実に収益を上げていくには深いファンをどれだけ生み出せるかが重要」(佐藤氏)なのだ。