アパレルブランドを複数展開するストライプインターナショナル(岡山市)が、デジタルを活用した新たなブランド戦略に力を入れている。カリスマ販売員をブランドマネジャーに引き上げ、商品企画やSNSを活用したマーケティングを一任。デザイン、生産、流通といった裏側をSPA(製造小売り)で培った技術やインフラで支える手法だ。D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランド的な発想で多様なブランドを展開し、100億円の事業創出を目指す。
ストライプインターナショナルは2021年2月より新ブランド「SLURR(スラ―)」を開始する。SLURRはミレニアル世代をターゲットとした女性向けカジュアルブランドだ。同ブランドはブランドの立ち上げに先駆けて「Instagram」や「note」で顧客とつながり、SNSを通じて商品のカラーバリエーションなどについて意見を取得して商品開発に生かすなど、D2Cブランドのような手法を取り入れている。さらに販路はECサイトのみ。自社ECサイトと「ZOZOTOWN」で販売する。
SLURRを手掛けるのは、20年7月に20年の歴史に幕を閉じた「E hyphen world gallery」のスタッフだ。かつては約100店舗を展開するなどストライプインターナショナルの主力ブランドだったが、ファストファッションの台頭、嗜好性の多様化に対応しきれなかった。E hyphen world galleryは典型的なマスブランドだったのだ。一方、SLURRは顧客と直接対話をしながら商品開発に生かすなど、ブランドのつくり方が大きく異なる。大量生産・大量消費からより顧客の嗜好を重視するブランドづくりへと、ストライプインターナショナルの戦略が大きく転換したことの象徴といえよう。
「従来の当社のブランドづくりは、コンセプトを決め、店舗をつくり、多種多様な商品を供給していくという流れだった。それだけでは若年層のニーズを満たせない。よりニッチな層を狙うブランドや、キャラクターが立ったインフルエンサーのブランドなど幅を持たせ、トータルで売り上げをつくる事業モデルをつくっていく」とKOL事業部の福田雅樹部長は説明する。
KOLとは聞きなれない部署だが、キー・オピニオン・リーダーの頭文字を取った造語だ。KOL、すなわち世の中に影響力を持つインフルエンサーを発掘し、ブランドマネジャーに据えた新たなブランド戦略を推進する。同社はこのブランド戦略をD2C関連事業と位置付け、全体で100億円規模に拡大することを狙う。一つひとつのブランドの規模は追い求めない。「2億円のブランドを50個つくっていく」(福田氏)。
その目的の達成には、多種多様なブランドアイデアが必要だ。これまでもタレントやインフルエンサーと共同でブランドを立ち上げてきたが、さらにもう一歩踏み込み、商品企画やマーケティング、SNSを通じた顧客とのコミュニケーションまでをブランドマネジャーに一任する。
顧客目線でコミュニケーションを取り、SNSのフォロワーを巻き込みながらブランドをつくれる人材として着目したのが販売員だ。接客を通じて、日々顧客と対話する販売員は、顧客ニーズを最も把握した存在ともいえる。ストライプインターナショナルの販売員の中にも固定客を多数持ち、その人から購入したいというカリスマ性を持った販売員や、SNSでフォロワーを多数持つ販売員などがいる。そうした人材に白羽の矢を立て、ブランドのかじ取りを任せていく。
フォロワーが多くても熱狂度が低いと売れない
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