新型コロナウイルス感染症の拡大によるロックダウンは解除されたものの、夜間の外出禁止令が出たままのフランス・パリ。年末のホリデーシーズンには、ホームパーティーを楽しむ姿も見られた。そんな中、植物由来の代替”高級食品”がビーガンを中心に話題を集めている。コロナ下で起きたパリの消費の変化とは。
1年前の今頃は、フランスにとってコロナはまだ対岸の火事だった。厳しい「ロックダウン1」が始まったのは2020年3月。静寂に包まれ、誰もが今までにない様々な思いを経験し、たった1カ月あまりのことだったのに、深い穴の中で長い季節を過ごしたような気がする。
そして夏の少し前にロックダウン1が解除。フランス人にとって人生に欠かすことのできない夏の休暇を満喫した。しかし、学校や会社が通常通り始まり出した秋、再びロックダウンへ。そしてまた冬の休暇前に解除。現在は18時以降の夜間外出禁止令が敷かれている。21年1月16日現在まで新型コロナで亡くなった人の数はフランス国内で7万人以上に及ぶとされている。
まだ緊急事態の真っただ中にあるフランスだが、前向きに生きる気持ちは決して失っておらず、こんな中でも、レストランや芸術関連施設のオープンを求める動きも一部では活発に行われている。
このコロナ下で、私たちの生活は随分と変わった。フランスでは特にロックダウン1で自身のことのみならず、忙しすぎた日々では振り返ることのなかった地球の環境について、自然や動物について人々が思いをシェアすることが目立った。もちろん、自然破壊の反対や動物保護を叫んできた人々はそれ以前もいた。欧州を中心に、動物愛護へ大きな影響を与え続けてきたものにビーガニズムムーブメントがある。ビーガニズムは肉や魚、卵、そして乳製品やハチミツに至るまで、動物性(昆虫などを含めた生き物すべて)の食品を一切とらず菜食で生きることをいう。動物性食品が体に合わない、もしくは口に合わないというより、生き物を人間のために殺して摂取するという行為を否定するイズムである。英国で1940年代に生まれ、70年代にビーガニズムの現在の定義が公式に確立したとされている。
英国から始まったそのムーブメントが、じわじわと米国やドイツに拡大。2000年ごろにはフランスでもビーガンという言葉が一般的になり、10年を過ぎたころからビーガン専門レストランやショップ、メーカーが目立ち始めた。そして21年の現在、ビーガン食品の数や種類は(ビーガンの)春がやって来たかのように日に日に増えている。11年にパリ左岸のムフタールかいわいにオープンしたビーガンカフェ「フォリズ」の店長、15年来のビーガンでもあるアマンディン・サンビセス氏によると「売り上げは年々伸びています。特に若い世代がとても興味を持って訪れています」と言う。
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