多摩美術大学は、デザイン経営を実践しようとするビジネスパーソンを対象に「多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム」を2020年9月に開講した。デザインとビジネスの両スキルを持つ人材育成を狙うなど、美大の役割が変わりそうだ。
東京・世田谷にある多摩美術大学の上野毛キャンパスでは、土日にもかかわらず約30人の“学生”が参加した教育プログラムがあった。2020年9月から11月までの3カ月間で11回が行われ、午前はデザイン経営の実践で知られる企業の経営者やクリエイターの講義に耳を傾け、午後はチームごとに新規事業の開発に向けたワークショップを開催した。
学生といっても、主に30~40代の社会人ばかり。大手や中小企業の他、スタートアップに所属する参加者もいた。一般的な教育プログラムと大きく異なる点は、講義の内容だけではなく、参加者の熱心さにあるだろう。毎回の講義では多くの質問が飛び交い、ワークショップでも議論が白熱。参加者は時間を忘れて取り組んでいた。
この教育プログラムは、多摩美術大学が開講した「多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム(TCL)」だ。デザインとビジネスを掛け合わせた人材を育成し、デザインの方法論でビジネスを推進する「デザイン経営」を実現させ、競争力強化に欠かせないブランド力の向上やイノベーションの創出などに貢献することが狙い。
19年11月に同プログラムの実施を発表すると、美大がデザイン経営の教育に本格的に取り組む試みとして話題を集めた。HAKUHODO DESIGN社長で同大統合デザイン学科教授でもある永井一史氏がTCLのエグゼクティブ・スーパーバイザーとなり、同大特任准教授でデザイナーの石川俊祐氏と丸橋裕史氏がTCLのプログラム開発を担当。講師陣にはBIOTOPE代表の佐宗邦威氏やスマイルズ社長の遠山正道氏、著書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』で知られる山口周氏も加わるなど、そうそうたる顔ぶれが並んだ。
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