JR西日本が本格的なデータ活用に向けて、大きく舵(かじ)を切った。2020年11月1日付でデジタルソリューション本部を設立、長谷川一明社長自らが本部長に就いた。併せて、一見するとただの集客キャンペーンだが、実は鉄道とグループのショッピングセンターを結びつけたデータドリブン施策というものを次々に展開。データ経営に本腰を入れ、将来に向けて着々と手を打っている。
新設されたデジタルソリューション本部の狙いを一言で言えば、「グループが保有する豊富で多彩な顧客・運行・保守データについて、デジタル技術により利活用を進め、新たな価値の創出と提供に継続的に取り組み、併せて企業としての業務変革も目指す」(デジタルソリューション本部データアナリティクス課長の宮崎祐丞氏)というものだ。
実はJR西日本は3年ほど前から、今回デジタルソリューション本部内に組み込まれた旧鉄道本部技術企画部が音頭を取って、車両の運行情報や空気圧情報、混雑率といったデータをAI(人工知能)で分析し、車両整備や運行などの改善を推進。併せて、得られたデータをマーケティングに生かす取り組みも進めてきた。その第1弾が2020年3月に実施した、子会社であるJR西日本SC開発(大阪市)傘下の複数のショッピングセンター(SC)を顧客に横断利用させるスタンプラリーキャンペーンだ(参考記事「JR西日本 “スタンプラリー”に隠されたデータ活用の深慮遠謀」)。
データをマーケに生かす取り組みは既に第3弾まで展開済み
その後、20年7月22日~8月23日に広島駅直結の商業施設「ekie」で、データをマーケティングに生かす取り組み第2弾となるスタンプラリーキャンペーンを実施。20年10月9日~11月8日には、大阪のJR天王寺駅直結の商業施設「天王寺MIO(ミオ)」で、第3弾となるスタンプラリーキャンペーンを実施した。いずれのスタンプラリーキャンペーンも、傘下SCの共通ポイントを利用できるアプリ「WESPO」を活用した。
第1弾のスタンプラリーキャンペーンでは、ユーザーの顧客属性(居住地)とポイントカードの利用履歴をデータ分析して得られた知見に基づき、複数のSCの中から、個々のユーザーごとに異なる3種類のSC名をスタンプ対象としてアプリにリコメンドし、2つまたは3つのスタンプを獲得したユーザーに所定のポイントを付与する形で、狙ったSCへとユーザーを送客した。
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