日本最大級のハンドメイドマーケットプレイス「Creema」を運営するクリーマが2020年11月27日、東証マザーズに上場する。アクセサリーから洋服、雑貨、家具、食器、スイーツまで、手作りのアイテムを個人間で売買できるサービスで、月間2000万人以上が訪問する一大プラットフォームに躍進した。丸林耕太郎社長はこれまでをどう振り返り、これから何を目指すのか。
2010年5月。あのメルカリより3年も早く、個人と個人をつなぐCtoCのマーケットを切り開いたサービスがある。ハンドメイドマーケットプレイスの「Creema」だ。
手作りのオリジナル作品をインターネットにのせて直接売買できる。今やプロやセミプロのクリエーター約20万人が出品し、登録作品数は1019万点(20年8月末時点)に上る。アプリのダウンロード総数は1000万を超え、一点ものや掘り出しものを求め、20~40代の女性を中心に毎月2000万人以上が訪れる。
流通総額は倍増の勢い
「広告費をそれほどかけなくても、オーガニックにユーザー数が積み上がっている」。クリーマの丸林耕太郎社長は、現状をそう分析する。
その言葉通り、20年2月期は広告宣伝費を前期の3分の1に削減したが、Creemaの流通総額は14%増の約90億円と2桁成長。新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要を取り込み、今期(21年2月期)は半年間で約80億円と、ほぼ倍増の勢いだ。
コロナ禍は、クリーマにとって追い風ばかりではなかった。全国に5店舗あったエディトリアルショップのうち、東京・日本橋と熊本市の計2店舗は撤退。主催する日本最大級のクラフトイベント「ハンドメイドインジャパンフェス」は、開催を断念せざるを得なかった。まさに「壊滅的」(丸林氏)な打撃を受けたオフライン事業を、Creemaが救った。
そのCreemaは、ゆっくりと粘り強く育ってきた。10年以上もの歳月をかけて「プロやセミプロのクリエーターが集まる場を圧倒的につくりきり、かつ一定の仕組み化ができた」と丸林氏は自負する。
Creemaのビジネスモデルは販売手数料収入と、広告収入で成り立っている。企業や自治体だけでなく、クリエーターも「作品プロモーション」として広告を打てるのが特徴だ。つまり、コミュニティーが広がれば広がるほど、収益が増えていく。
当初は、丸林氏自らギャラリーやイベント会場に通いつめ、クリエーターに出品を直談判する日々だった。その熱意が1人、また1人と伝わり、だんだんと質が高い作品が集まるようになった。それに呼応するようにユーザーが少しずつ増えていったのだ。
並行して取り組んできたのが、サービスの磨き上げである。クリーマは技術者を社内に抱え、アプリなどの開発を内製化している。「IT企業だったら、まずはネットサービスを磨き込むべきだと思った。知ってもらえれば、愛してもらえるというレベルまでいった段階で、勝負をかける。その順番を何よりも大切にしてやってきたので、(同業他社との)プロダクトの差分が大きくなった」(丸林氏)。
実際にCreemaのアプリは、米アップルや米グーグルが運営するアプリストアで、トップクラスの高評価を受けている。「結局、品質の高い作品が集まり、満足度の高いプロダクトがあれば、広告に依存しなくても、確実にリピーターになってもらえる」。そんな自信を胸に、次なる挑戦に踏み出した。
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