巻頭企画に笑福亭鶴瓶やマツコ・デラックスが登場し、CEO(最高経営責任者)と対談――。伊藤忠商事が2020年5月に創刊した広報誌「星の商人」が、企業広報誌とは思えないコンテンツで話題だ。手掛けているのは、20年1月に設立された新部署。異色の広報誌立ち上げの狙いは何か。
伊藤忠商事は約70年にわたって発行してきた月刊社内報「伊藤忠マンスリー」を刷新し、20年5月に季刊広報誌「星の商人」を創刊。巻頭のCEO対談企画に笑福亭鶴瓶やマツコ・デラックスを登場させるなど、インパクトのあるコンテンツが話題を呼んでいる。
19年度決算で4年連続最高益を更新するなど好調の波に乗る今、「社内報」を「広報誌」に変身させた理由は何か。同誌の発行責任者を務める代表取締役 専務執行役員CAO(Chief Administrative Officer、最高総務責任者)の小林文彦氏に聞いた。
「星の商人」を手掛けているのは、コーポレートブランドを高める目的で、岡藤正広会長CEO肝煎りで20年1月に設立された新部署「Corporate Brand Initiative(CBI)」。新部署設立と同時に、同部署のトップも務める小林氏が担ったミッションの1つが、「企業価値を高めるために社内報のクオリティーを上げ、幅広いステークホルダーに読者層を広げよ」ということだった。「5月の発刊までほとんど時間がないなか、初めてのチャレンジが山積し、創刊号はいわば突貫工事。でもその勢いが、インパクトにつながったように思う」と小林氏は振り返る。
目指したのは「読んだ後に書棚に戻してもらえる社内報」
同誌が目指したのは、「読み終わっても捨てられず、本棚に戻してもらえる」雑誌。社内に専任スタッフを1人(現在は2人)置き、ブランドマーケティングやクロスメディア戦略のスペシャリスト数人が兼任でサポートするという体制で、制作に当たった。
もちろん従来の社内報同様、インナーコミュニケーションをスムーズにして社内の組織力を強化する役割もある。だが主眼はそれより少し目線を上げ、伊藤忠商事グループの企業価値を高めることにあるという。そのために「社内報」から「広報誌」に趣旨を変更したが、「創刊号と第2号ではそのバランスに苦慮した」と小林氏は語る。
創刊号では、特色を出すために社外の読者の目を強く意識し、大胆なチャレンジをした。するとOBや社外の役員などから「もう少し伊藤忠のことを知りたい」という意見が出た。そこで第2号では社内情報の伝達のウエートをやや高めた。「バランスを探りながら作ってきたが、第2号でだいたい絶妙なバランスに落ち着いたかなという感じがしている」(小林氏)。
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