リユース大手のコメ兵がOMO(Online Merges with Offline=オンラインとオフラインの融合)強化を急ぐ。2020年6月には店員100人に接客専用スマートフォンを持たせ、店員と顧客がLINEで直接つながる「LINE接客」を強化。店員1人当たりの売り上げは1.3倍に増加した。

コメ兵は2020年8月にECサイトを刷新し、データ基盤を整備した
コメ兵は2020年8月にECサイトを刷新し、データ基盤を整備した
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 コメ兵の顧客のカスタマージャーニーを分析すると、ECサイトで商品を探し、目当てのものが見つかると最寄りの店舗に取り寄せて吟味し、購入するというパターンが増えている。コメ兵の主力商品は高級バッグや時計などの中古品のため、実物を手に取って確認したいニーズが高く、このような顧客接点のECファースト化が進んでいる。コメ兵ではこうしたECサイト基点での購入の場合、アシスト効果を評価する指標を「EC関与率」として算出している。

 こうした購買行動は新型コロナウイルス感染症拡大によって加速した。3密回避のために店舗での滞在時間をできるだけ短くしたい意向が強まったことが要因だ。コメ兵のEC関与率は既に48.2%と過半に達しようとしている。19年3月期時点では29.6%だったため、1年半で20ポイント近く増加したことになる。このように消費者がECサイトと店舗を行き来する購買行動が定着する中、オフラインとオンラインを統合した接客をできる体制づくりが必須となった。

 そこで課題となるのがデータの統合だ。ECサイトでの購買行動と店舗の購買履歴を統合的に蓄積することで、顧客一人ひとりに寄り添った接客の実現を目指す。コメ兵ではECサイトで会員登録をすると、マイページに顧客ごとのバーコードが表示される。店舗での購入時、または商品の買い取りを依頼したときにこのバーコードを提示することで、ECサイトと店舗の両方で使えるポイントがたまる。こうしてECの会員IDを軸としたデータ統合基盤を整備した。これにより、購買履歴についてはオンラインとオフラインを統合できていた。

 データが足りなかったのは購買前の行動だ。コメ兵はこれを補うため、20年8月にECサイトを刷新。これまでとれていなかったサイト上での行動履歴の蓄積も可能にした。サイト上での行動履歴とはサイト内での検索、商品ページの閲覧などを指す。

 蓄積したデータはまずECサイト上でのパーソナライズに生かす。「ECサイトは検索とレコメンドの精度が最も重要になる」(コメ兵執行役員の藤原義昭マーケティング統括部長)。ECサイトでの検索キーワードに対して顧客の望む商品を的確に表示し、関連商品などとして顧客好みの商品を並べることで、より購買につながりやすくなるというわけだ。「これまで捕捉していなかったサイト内の行動データを蓄積することで、検索結果やレコメンドの精度向上に生かしていく」と藤原氏は刷新の狙いを語る。今後、検索結果の上位表示を顧客の行動に基づいて最適化していくという。

ECサイトで会員登録すると、マイページに専用のバーコードが表示されるため、店舗での購買時に提示することでポイントがたまる
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