ファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売り上げや事業価値を高めていく「ファンベース」。この概念を提唱した佐藤尚之(さとなお)氏が会長を務めるファンベースカンパニー(東京・港)が、「ファンの感情を可視化」する新機軸の診断ツールを開発、2020年9月16日より提供を始めた。その中身とは?

「ファンベース診断 v.1.0」は20年9月16日から提供スタート
「ファンベース診断 v.1.0」は20年9月16日から提供スタート
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 ファンベースカンパニーは、さとなお氏が提唱するファンベースの概念に共感した野村ホールディングスとアライドアーキテクツの3社で2019年5月に設立。ネスレ日本でコーヒーのオフィス向け定期宅配サービス「ネスカフェ アンバサダー」を大成功に導いた津田匡保氏も創業メンバーに加わり、20年4月よりファンベースカンパニー代表取締役社長に就任している。

 同社のミッションは、ともすれば「顧客を囲い込む」「利用する」といった方向に陥り、ファンマーケティングやテクニック論と混同されがちなファンベースの概念を正しく伝えること。また、企業と伴走し、中長期的にファンと共に成長していくプロジェクトを推進することで、社会全体にも好影響をもたらすことだ。

 既にファンベースの概念を軸とした「コーポレートファンをつくる」「ファンと事業開発をする」「ファン社員を増やす」などのプロジェクトが複数の企業で進んでおり、社内セミナーなども含めて80社程度に伴走してきたという。その内訳は、大手メーカーからスタートアップ、小売り、メディア、スポーツチーム、地方自治体まで多彩だ。

 そんなファンベースカンパニーが開発したのが、ファンの感情を可視化する診断ツール「ファンベース診断v.1.0」だ。これまで、自社の顧客の状況を把握するには、購買データを分析したり、NPS(ネット・プロモーター・スコア)を測定したりと、様々な方法があった。だが、いずれも顧客の「感情」を読み解くには至らない。

 例えば、購買データだけに着目すると、購入金額の多い人=上位顧客となりがちだが、その人が商品やブランドに対して愛着を持っていなければ、長く上位顧客であり続ける保証はない。また、NPSは一時のキャンペーンなどにも左右されやすく、商品やブランドの機能価値(例:デザインが良い、カロリーが低いなど)だけでもスコアが上がってしまう。機能価値だけでは競合によりいずれ陳腐化されてしまうので、ファンに長く愛されていくには、その商品やブランドに対するポジティブな感情=情緒価値や、社会・未来に対するポジティブなイメージ=未来価値も同時に把握することが重要となる。

ファンベースの実践では、機能価値だけではなく、ファンの感情面である情緒価値や未来価値が重要となる
ファンベースの実践では、機能価値だけではなく、ファンの感情面である情緒価値や未来価値が重要となる

 ファンベースカンパニーの津田氏は、「私自身、ネスカフェ アンバサダーを手掛ける中でいろいろな指標を活用してきたが、購買実績などの『行動』と好きな気持ちである『感情』が一致している人、つまり今後もサービスを愛して買い続けてくれる人を把握するのは困難だった」と話す。また、様々な企業に伴走する中で、「自社のコアなファンがどんな人か知りたい」「もっとファン度を上げていきたい」などの声が多く寄せられるようになった。そこで1年がかりで開発したのが、ファンの感情を可視化するファンベース診断というわけだ。

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