これまでライブ映像を公開したのは映画館でのイベントだけという山下達郎氏が2020年7月30日、初めてのネット配信を実施した。新型コロナウイルス感染拡大の影響でコンサートができない中、山下氏が重視したのは音質とセキュリティーだった。配信基盤を運営するSPOON(東京・港)の谷田光晴代表に聞いた。

「MUSIC/SLASH」が2020年7月30日に山下達郎氏のライブ映像を配信した。写真は17年の音楽フェス「氣志團万博」の様子(写真/菊地英二)
「MUSIC/SLASH」が2020年7月30日に山下達郎氏のライブ映像を配信した。写真は17年の音楽フェス「氣志團万博」の様子(写真/菊地英二)

 「音質にたまげた」「恐ろしいほど、音質が良い」「達郎氏が満足するクオリティー」――。2017年と18年収録のライブ映像を配信したネット番組「TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING」の終了後には、視聴したファンから称賛の声がSNSなどネット内で広がった。新しい動画配信サービス「MUSIC/SLASH」(ミュージックスラッシュ)の第1弾公演だった。

 MUSIC/SLASHは、業界最高レベルという音質とセキュリティーへのこだわりが特徴の映像配信サービスだ。チケットを買った人がリアルタイムで一度だけ視聴できるという仕組みで、アーカイブ再生や巻き戻し再生などはできない。純粋に音と映像を楽しんでもらうためとして、コメントや投げ銭などの機能もない。生のライブを見に行くのに近い形の配信サービスだ。

アーティストがやられっ放しの状態を打ち破りたい

 サービスを運営するのは映像制作のSPOON(東京・港)。同社代表でクリエイターの谷田光晴氏は、09年ごろより音楽イベントなど動画配信の環境構築から企画・制作まで幅広く手掛けてきた。サービスを立ち上げた経緯をこう語る。

 「ネット上の映像配信も長く手掛けてきて、(YouTubeなど)広告収入型のビジネスモデルに疑問があった。第三者に動画を意図せずアップロードされるなど、アーティストはやられ放題ではないか」(谷田氏)。不正アップロードをさせない、適正な料金を支払っていない人には見せないという仕組みが整っておらず、あまりにもユーザーが有利な仕組みとなっている。「それを打ち破るには、フラッグシップと呼べるサービスを作らないといけないのではないかと考え始めた」(谷田氏)

SPOON(東京・港)代表で映像クリエイターの谷田光晴氏
SPOON(東京・港)代表で映像クリエイターの谷田光晴氏

 18年ごろから山下達郎氏側からライブツアーの映像クリエイションに参加してくれないかと打診があり、谷田氏はツアーにも帯同する機会を得たという。その中で、20年は東京五輪・パラリンピックの影響で会場が使えないため、ツアーがしづらくなるという話を聞き、配信サービスの具体的な準備に取りかかった。

 映像の配信システムについてはこれまでも連携してきたMEDIAEDGE(メディアエッジ、神戸市)、チケットの課金や販売の仕組みはイープラス(東京・渋谷)と作り上げるサービス構成とした。

映像配信のMEDIAEDGE(神戸市)やチケット販売のイープラス(東京・渋谷)と連携してサービスを構築している
映像配信のMEDIAEDGE(神戸市)やチケット販売のイープラス(東京・渋谷)と連携してサービスを構築している

音質とセキュリティーで価値をつくる

 アーティストがチケット代金を通常のコンサート並みに受け取るための音楽配信プラットフォームを作るには、プレミアム感のある音質と映像のコピーができないセキュリティーの仕組みが必要となる。メディアエッジの配信用エンコーダーは業界でも最高音質といえる毎秒384キロビットの配信に対応する。BSデジタルよりもビットレートは高いという。

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