新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない中、在宅勤務の長期化が続いている。実際に働き方はどう変わったのか。在宅勤務を続けて見えてきたことは何か。早期にリモート体制に踏み切った共通点を持つ、ビジネスチャット「Slack」を展開するSlack Japanの佐々木聖治日本法人代表と、ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリーの仲暁子CEO(最高経営責任者)が対談で語り合った。
いきなり「社内ロックダウン」
―新型コロナウイルスの感染拡大により、働き方はどう変わったか。
佐々木聖治氏(以下:佐々木) Slackには全世界で2000人余りの社員がいるが、米サンフランシスコの本社からの号令で、全18拠点のオフィスを早々に閉鎖した。特に東京は中国に近かったこともあり、2020年2月26日、全国の小中高校に臨時休校を要請する方針が明らかになったときに、じゃあ翌日から出社をやめようとなった。
3月6日からは会社のICカードが無効になった。東京・大手町のオフィスに行っても入れない。つまり、強制的にロックダウンした。それが今も続いていて、当初は8月末までの予定だったが、9月以降も継続することになった。残念ながら、オフィスに行きたくても行けない状態が続いている。
創業者でCEOのスチュワート・バターフィールドのメッセージはパワフルだった。「これは短距離競走じゃなくてマラソンだ。Slackというメッセージングプラットフォームがあるのだから、安全第一を図り、究極の選択としてフルリモートで仕事をしよう」と呼びかけた。3月11日には営業、カスタマーサクセスのメンバー約800人が集うグローバルイベントを米国で予定していたが、丸々デジタルに置き換えた。その準備は当然Slackでやり取りし、実際のセッションはZoomで乗り切った。
仲暁子氏(以下:仲) ウォンテッドリーは3月27日、東京で感染が広がり始めたタイミングで、一気にフルリモート体制へと切り替えた。創業初の事態ではあったが、ほとんどの業務がオンライン化されていたので、ほぼ何の混乱もなく、もう明日からという感じでスムーズに移行できた。実はオンライン会議システムはあまり使ったことがなかったが、稟議(りんぎ)や押印など労務、法務部門の電子化が進んでいたのが大きかった。
しかし、実際にフルリモートに乗り出すと、全体的に生産性が下がってしまった。特にデザイナーはホワイトボードを使って対面で一気に議論しないと、デザインのすり合わせにものすごく時間がかかる。
一方、開発陣はむしろ生産性が上がったという声が多かった。驚いたのは、この緊急事態宣言の前後に日本で3つ、海外で1つの新サービスをローンチできたこと。この間、1回も顔を合わせていない。ボトムアップよりはトップダウンにならざるを得なかったが、やればできた。その一方で、役職やロール(役割)によっては顔を合わせて仕事をしたほうが生産性が上がるということも分かってきたので、緊急事態宣言解除後の6月1日からは最大で週2日は出社できるようにあらためた。
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