東京都品川区は2020年8月から区民全員を対象とした、独自給付金の受付を始める。政府が主導した「特別定額給付金」の給付で、品川区は他の区に比べ給付金の振り込みが遅れ、区民の不満を招いた。その反省を生かす。

東京都品川区は2020年8月から独自給付金の受け付けを開始する(写真提供/Shutterstock)
東京都品川区は2020年8月から独自給付金の受け付けを開始する(写真提供/Shutterstock)

 「20年6月26日時点で、特別定額給付金の申請率は85%に達した。ところが、給付率は約20%にとどまっていた。23区で比較したとき、品川区は給付率がかなり低かった」

 品川区地域振興部の宮澤俊太しながわ活力応援給付金担当課長はこう振り返る。区としても初めての施策だったため、申請のピークや作業工程が読めず、対応が遅れた。低水準の給付率に業を煮やした区民からコールセンターに問い合わせの電話が殺到。15台のコールセンターで対応に当たったが、申請書の開封の委託先と連携ができておらず、一人ひとりの申請状況を案内できず、区民の不満を招いた。

 寄せられる問い合わせ内容の大半は「申請書は届いているのか」「いつ振り込まれるのか」という2点に集中したが、申請書が届いていても、開封されていなければ未着と同扱いだ。その確認に当たれば、振り込みがさらに遅れる。申請書の処理の効率化と進捗状況を把握するための仕組み、この2つが整ってなかったことが不満の要因だった。

 また、電話がひっきりなしにかかってくるため、つながりにくい状況が続いた。しかも、コールセンターの営業時間は9時から17時までで、人によってはそもそも問い合わせが難しかったこともさらなる不満につながった。

20年7月28日時点で品川区の特別定額給付金の給付率は9割を超えたが、1カ月前には約20%にとどまっており他の区に比べて給付が遅れた
20年7月28日時点で品川区の特別定額給付金の給付率は9割を超えたが、1カ月前には約20%にとどまっており他の区に比べて給付が遅れた

 そこで、これらの反省を生かし、品川区民を対象とした独自給付金では、デジタル技術を駆使した円滑な給付と透明性の高い情報開示を目指した。

 品川区は20年6月1日、区民を対象に中学生以下は5万円、それ以外には3万円を一律で給付する「しながわ活力応援給付金」を実施すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大下で、区民の負担の軽減し、区全体の活性化を目指した施策だ。8月上旬から申請書の送付を開始し、順次受付を開始する。

「AI OCR」で受付処理を効率化

 まず、申請書の処理にはAI(人工知能)を活用した光学文字認識機能(OCR)を取り入れる。画像をスキャナーに読み込ませるだけで、AIが画像処理をして、必要な情報をシステムに自動入力する仕組みだ。AIに読み取らせる情報を事前に学習させることで、文字の認識率などを高められる。品川区は日本電気(NEC)が開発するAI OCRのスキャナー4台を導入して独自給付金の申請書の処理に当たる。

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