マーケティングや経営戦略の要として用いられる「ブランド」や「ブランディング」という言葉。しかし、その定義は漠然としており、「ブランドとは経営だ、パーパスだ」「ブランディングとは顧客との絆づくりだ」など、歴史的に様々な解釈が生まれてきた。博報堂コンサルティング執行役員の楠本和矢氏が、その理由を読み解く。
【第2回】ブランディングは、もっとシンプルに捉えると本質が見えてくる
【第3回】ブランドコンセプトのつくり方とは 「3つの連想」を積み重ねる
「ブランド」「ブランディング」という言葉は、1990年代の前半、デビッド・アーカーの名著『ブランド・エクイティ戦略』(ダイヤモンド社)が発売されたころから日本でも使われ始め、いつしか経営戦略、マーケティング戦略の中でも当たり前のように使われるようになりました。
しかしブランディングって結局、何を目的として、どのようなプロセスを指すのかについて改めて問われると、明確にこうだと見解を述べられる人はかなり少ないのではないでしょうか。
ブランドやブランディングとは、一般的にどのように定義されているのでしょうか。皆さんもよくご存知の有名な定義を含め、いくつかの代表例をピックアップしてみました。
【ブランドとは】
●ブランドは組織から顧客への約束(デビッド・アーカー)
●生活者と結ぶ約束で生みだされる「ココロの絆」
●消費者の中で生まれるイメージの総体
【ブランディングとは】
●精神的な構造を創り出すこと(ケビン・レーン・ケラー)
●ユーザーに共通イメージを持たせたり、実態のない価値を与えたりする方法の総称
●商材の価値を、顧客が頭の中で想起できる「知覚価値」に転換すること
ブランドとは総じて「顧客が抱くイメージ的なもの」という解釈が多いでしょうか。そしてブランディングとは、それをつくるための作業。ブランドというアプローチの礎を築いたアーカーやケラーも、基本的にはそう解釈しています。表現の違いはあれども、至ってシンプルであり、分かりやすい。おそらく、今も昔もその定義が大きく変わっていることはありませんし、私自身も同じような認識です。皆さんもきっとそうでしょう。
本来シンプルであるはずの「ブランド」や「ブランディング」。しかし、概念としてのとっつきやすさゆえに、時代を経るごとに、その捉え方や位置付けが変わってきました。結果として、ブランドやブランディングに様々な目的や意味合いが内包され、非常に解釈にバラつきのある、曖昧なものとなってしまったと感じています。
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