コロナ禍によってニューノーマルの時代を迎え、ビジネスや働き方は変貌を遂げようとしている。2020年7月13日に開催された「世界デジタルカンファレンス2020」(日本経済新聞社主催)のパネルディスカッション「ニューノーマルにおけるDX推進戦略」では、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する先進企業の取り組みや戦略、新型コロナで企業や業界のDX関連ビジネスはどのように様変わりしていくのかが議論された。その模様を前後編でお届けする。

「世界デジタルカンファレンス 2020」は日経ホールで無観客開催し、オンライン配信された
「世界デジタルカンファレンス 2020」は日経ホールで無観客開催し、オンライン配信された
<パネリスト>
●D4DR社長 藤元健太郎氏
●TOUCH TO GO社長/JR東日本スタートアップ マネージャー 阿久津智紀氏
●パイオニア モビリティサービスカンパニー Chief Digital Officer 石戸 亮氏
<モデレーター>
日経クロストレンド・日経トレンディ発行人 杉本昭彦

杉本昭彦(以下:杉本) DX(デジタルトランスフォーメーション)は人によって様々な捉え方があります。今回は、業務効率化やコスト削減という視点ではなく、DXによって新しい価値をどう生み出していくかを議論したいと思います。

阿久津智紀氏(以下:阿久津) 私は、若手社員時代に駅ナカの自販機の再編をメンバーとして行い、その後、鉄道会社にもかかわらず青森でシードルという酒を造るプロジェクトにも参画。また、JR東日本のグループ共通ポイント事業にも携わってきました。2017年からはJR東日本スタートアッププログラムという、JR東日本グループとスタートアップ企業が協業して事業を生み出すプログラムを担当しています。

 現在、TOUCH TO GO(タッチ・トゥ・ゴー)という会社で進めている無人決済コンビニは、まさにこのプログラムの中で進行中の新事業。JR東日本は大企業なので、新しいビジネスを生み出すのに時間がかかるところを、外部のスタートアップと連携することで、より短時間に世の中にプロダクトを出していく取り組みを進めています。20年3月には1号店となる高輪ゲートウェイ店をオープンしました。

 スモールにビジネスを始めることで、顧客の反応も見ながら徐々に進化させ、少しずつ大きくしていくのが当社の戦略です。狙っているマーケットは「自販機以上コンビニ未満」。コロナ禍では商圏が非常に狭くなってきています。皆さん、近隣の商店街には行きますが、大型の商業施設には行きにくい状況です。そうした中、無人決済コンビニで、「顧客の買い場を近くしていく」戦略で進めています。

阿久津 智紀 氏
TOUCH TO GO社長・JR東日本スタートアップ マネージャー
2004年JR東日本に入社、東日本キヨスク(現JR東日本リテールネット)に出向。駅ナカコンビニNEWDAYSの店長や、専門店の店舗開発業務を担当。07年にJR東日本ウォータービジネスに出向し、自動販売機の飲料商品の仕入れを担当。JR東日本、JR東日本青森商業開発で商業施設「A-FACTORY」の企画、運営や青森でのシードル工房事業を担当。14年JR東日本事業創造本部で共通ポイント「JRE POINT」の企画・運営を担当。17年からはJR東日本スタートアッププログラムを担当し、19年7月より現職

杉本 高輪ゲートウェイ店の実績は?

阿久津 平均客数が平日約800人、土日約1200人、客単価約350円であり、エキナカのコンビニと同程度の実績となっています。決済正解率は90~95%でおおむね安定稼働。不正解の5~10%は顧客の交通系マネーカードの残高不足や、子供が保護者と重なるなどしてカメラが人や物を見失うことが原因となっています。

 一方で、このサービスのシステムと仕組みをBtoBで外販をしていくことも進めています。小売店はイニシャルでの費用負担が困難な部分もあるので、そうした場合はサブスクモデルで月額50万~80万円のランニング費用だけで導入可能なプランも用意。今年度(20年度)は4~5店舗をPoC(Proof of Concept、概念実証)の形で展開し、4年後は100店舗を超える導入を達成する計画です。

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