コロナ禍でテレワークが当たり前になり、オフィスを前提としたワークスタイルからの変革が求められている。場所の概念や「対面こそが仕事」という常識を超えた、マーケターやクリエイターの新たな働き方とは? そのとき、オフィスはどのような役割を担うのか。

 前回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって社会と人々の生活がいかに変化したかについて「5つの変化」に整理して解説し、「起こすべき4つのアクション」を紹介した。

 ライフスタイルやワークスタイルの変化を余儀なくされた人々には、当然のことながら我々、マーケティングや広告、クリエイティブ業界に属する者も含まれる。前回は社会全体のことについて述べたので、今回は「マーケターやクリエイターのこれからの働き方」や「新しい体験やサービスの生み出し方」はどうあるべきかについて、事例を交えながら紹介したい。

「場所」に依存した従来のワークスタイル

 まず大前提となるのは、以前のライフスタイルは戻ってこない点だ。これまで当たり前だったことも、今後はそうではなくなる。日本の労働人口である就業者数は6724万人(総務省統計局「労働力調査」2019年平均速報値)。その大部分には職場という固定された「場所」があり、社員と職場と仕事は密接な関係で結びついていた。

テレワークが普及した今、社員が1カ所に集まるオフィスの再定義が求められている(写真/shutterstock)
テレワークが普及した今、社員が1カ所に集まるオフィスの再定義が求められている(写真/shutterstock)

 日本では緊急事態宣言の発令の前後から、多くの企業でテレワークが検討あるいは実施されたが、IT業界など一部の先進的な企業では以前からテレワークが標準的に導入されていた。一方で、我々のマーケティング業界は「対面こそが仕事」という習慣もあったのではと筆者は感じる。

 ワークショップやブレインストーミング、ミーティング、撮影、そして対面のディスカッションや進捗の確認、成果物を前にしての議論など、大人数が一堂に会して働くことが当然だったが、この数カ月で様相が一変した。マーケターやクリエイターといった職種の人材にとってのこれからの常識とは何だろうか。今回は、場所に着目してこれからの働き方の変化を見てみよう。

場所の概念を超え、新しい従業員体験を創出

 我々マーケターやクリエイターに限らず、オフィスワーカーにおける生活と労働を俯瞰(ふかん)的に観察してみると、次の「3つの場所」を行き来する循環モデルで成り立ってきたことが分かる。「家・自宅(1st Place)」「勤務先・職場(2nd Place)」「カフェ、居酒屋、ジム、行楽地などの趣味の空間。第3の場所(3rd Place)」だ。

 日本のオフィスワーカーは余暇の場もオフィス付近であることが多く、プライベートと仕事の境界線があいまいだった。

 しかし、新型コロナウイルス感染症の流行により、場所に縛られないライフスタイルへと社会全体が大きくシフトした。1st Place(自宅)が仕事や余暇の中心という全く新しい従業員体験が誕生したのだ。

「クラウド上の職場」の実現

 場所の概念を超えたワークスタイルといえば、YouTuberやプログラマー、グラフィックやサウンドなどのクリエイターを思い起こす読者もいるだろう。明確な作業範囲が存在する職種では、すでに場所を問わずに仕事ができていた。つまり「職場がクラウド上にある」という状態である。

 テレワークの普及によってクラウド上に集合するワークスタイルが生まれ、同じようなライフスタイルを選択できる職種が大きく広がっている。当然、その中にはマーケターも含まれる。

 2nd Placeや3rd Placeがクラウド上に移るとこれまで毎日通勤してきたオフィスは「フィジカルな環境」としてこれまでとは異なる新しい役割を担うことになる。

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