新型コロナは企業の営業スタイルまで変えてしまった。飛び込みはおろか、テレアポ(テレホンアポイントメント)すらままならない今、新たな営業手段として注目されているのが、問い合わせフォームを使ったAI営業だ。2020年1月に誕生したスゴ腕営業マン「ダニエル」とは何者なのか。そこには、未来のAIと人間との協力関係の縮図があった。
営業しようにもこのご時世、飛び込みはためらわれる。電話でアポイントを頼もうと思っても、そもそも窓口が不在で担当者までたどり着けない――。新型コロナウイルスの感染拡大は、営業のスタイルまで大きく変えてしまった。せっかくいい商品やサービスができたのに売り込めない。こんな嘆きを持つ営業の人も多いのではないだろうか。
そんななか、コロナ禍でも営業先からの受注をゲットするスゴ腕営業マンがいるという。売り込みたい商品やサービスに興味を持ってくれそうな企業を高い精度で選び出し、一気呵成(かせい)に営業をかける。その名は「Daniel(ダニエル)」、AI営業マンだ。
「新型コロナウイルスの感染拡大前後の1月と4月で比べると、トライアルの利用企業が398%増加した」と語るのは、ダニエルを開発した「QuickWork」(東京・目黒)社長の村岡功規氏。ダニエルの主戦場はテレアポではなく、企業が用意している問い合わせフォームだ。営業マンが人力でターゲット企業を探し、問い合わせフォームにたどり着き、一つ一つの項目を入力する、といった作業をすべて自動で処理する。
一口に問い合わせフォームと言っても、項目や内容はそれぞれ異なり、コピペ中心にしたとしても5分程度はかかる。ダニエルが1件のフォームを書き上げる時間は1秒。300分の1ぐらいに短縮できるという。
なぜこの営業方法が伸びているのか。背景としてあるのは、前述のように、プッシュ型のアウトバウンド営業の主流がテレアポではなくなってしまったためだ。「テレワークが急速に進んだことで、本社に電話をかけてもつながらないという事態が増えている。多く企業が営業方法の主軸を問い合わせフォームに方向転換したが、手動でのフォーム営業は莫大な工数がかかる。その結果、フォーム営業の時間を短縮して効率化を図りたいという企業からの問い合わせが増加した」と村岡氏は語る。
加えて、不景気になると営業活動費が企業にとってはコストとして重くのしかかる。「AI営業により、営業部隊自体の生産性を上げようという動きもあったと思う」(村岡氏)
電気・ガス小売事業などを手がけるReivalue(リアイバリュー、東京・港)では、コロナ禍でも営業を推進するため、5月からダニエルを採用。もともとテレアポ会社などにも委託していたが、5月に成約したのはダニエル経由の営業だけだったという。
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