ブシロードが見据える「ウイルス後」

――外出自粛による「巣ごもり需要」がプラスに作用した事業はありますか。

木谷氏 アプリ関連の収益、特にDAU(デイリーアクティブユーザー数)が好調だったり、ライブ会場で売るはずだったアイテムがECを通じて意外なほど売れたりと、比較的明るい要素もありました。

 特に驚いたのが新日本プロレスです。興行をしていないのに、ECとコンテンツ配信で前年同月比50%くらいの売り上げがありました。応援の意味で買っていただけたのだと思います。

5月にECサイトで限定予約発売した新日本プロレスのマスクカバー。布マスクやサージカルマスクの上から装着する
5月にECサイトで限定予約発売した新日本プロレスのマスクカバー。布マスクやサージカルマスクの上から装着する

 ただ、あくまでも応援ですから、それがずっと続くわけではない。過去にMERS(中東呼吸器症候群)やSARS(重症急性呼吸器症候群)の流行もありましたし、新型コロナウイルスが落ち着いても新たな疫病が広がる可能性はあります。今後を考えても、デジタルシフトを進めるしかないですね。

 オンラインイベントのノウハウもだいぶ蓄積されてきました。これをさらに推進します。もちろんECやアプリにも注力します。オフラインやアナログのよさを保ちつつ、より一層、デジタルにシフトしていこうと思っています。

モチベーションの維持に必要な「目標としての大会」

――ブシロードの事業では、公認店舗で開催されるヴァンガード(トレーディングカードゲーム)のイベントなどもあると思いますが、それらへの施策はいかがですか?

木谷氏 実は5月中旬から「戦闘再開」と宣言して外回りを始めました。専門店チェーンの本部5つを訪問したんですが、外出自粛の中、どこも集客に困っていました。大会などのイベントがないと、来店者が減って店内の対戦用スペースがすいてしまいます。そこでヴァンガードの原画展を開催したり、いくつかのイラストを基に遊ぶ時に下に敷くマットを作ったりと、空きスペースの活用を提案しました。

 大会がないことは売り上げにも響きます。ユーザーは新しいカードでデッキを作る気にならないんですよ。そこで、6月以降の大会再開も告知しました。緊急事態宣言が解除されたら、あとは店舗の判断でイベントを開催していいですよと通達してあります。

 毎年秋に開催している「WGP」という大型大会は中止を決めましたが、店舗にとってもユーザーにとってもそういう大きな目標が必要であることは間違いありません。

――とはいえ、数千人を1カ所に集める大会はさすがに不可能ですよね?

木谷氏 そこで、新たな大会ルールを考えました。最大16人が出場する予選を各店舗で1カ月に4回開催し、まずは8人を選出。店舗内の決勝で1人の代表を決定します。次に全国を14の地域に分割して店舗代表が競う地区大会を実施。最後に地区代表が集まる決勝大会を東京で開催します。こうすることで、各予選や決勝に出場する選手の数を抑えることができます。地区大会からは配信も考えています。

 大会の規模は小さくならないように配慮しつつ予選を細かく分割することで、一度に集まる人数を減らしなるべく移動を伴わないようにします。店舗予選が複数回あることで大会がより身近になりますし、全国大会への出場に二の足を踏んでいた人も、近所の店舗で開かれる大会なら「出てみよう」と思ってくれるかもしれません。大会の準備や出場登録などで、店舗に足を運んでもらう回数が増えることも期待しています。

(写真/酒井 康治、写真提供/ブシロード)