アプリ売り上げの20%を公認店舗に還元

――2月28日には、ゲームアプリ『ヴァンガードZERO』の3月から5月の売り上げの20%を公認店舗に還元する施策を発表しました。その後も、バナークリック、リツイートに応じた利益還元策、感染防止のためのスクリーン「TCGウォール」やマスクの提供など、公認店舗への支援策を次々と発表・実施されています。

木谷氏 TCGウォールの提供を開始した時点では、コンビニやスーパーのレジにもスクリーンは設置されていませんでした。Twitterなどでは「意味があるのか」といった投稿もありましたが、あれをきっかけに「他にどういう対策が取れるのか」「うちの店なら何ができるのか」を考えてみてほしかったんです。こういう非常時は想像力を働かせて工夫することが大事です。実際、今回のいろいろな対策では想像力が役立ちました。

公認店舗に配布した「TCGウォール」の使用イメージ。対戦スペースでの使用を想定した
公認店舗に配布した「TCGウォール」の使用イメージ。対戦スペースでの使用を想定した
対戦スペースが閉鎖中のため、レジに設置した店舗も
対戦スペースが閉鎖中のため、レジに設置した店舗も

――銀行への資金調達の打診も早々にされたそうですね。

木谷氏 銀行からは「年末に借りたのになぜまた借りるんだ?」と言われました(笑)。1月下旬から役員会で「どんな理由をつけてもいいから借りてくれ」と言っていたのですが、申し入れから1カ月くらいはなかなか進みませんでした。

 そこで、「『貸さないんだったらメインバンクを変える』と伝えろ」と社内の担当者に指示したんです。そこから一気にスピード感が変わりましたね。60億円程度調達するつもりでしたが、結果的に80億円ほど借りられました。

 おそらく銀行側は新型コロナ対策でそれだけ使うと想像できなかったんでしょう。取引先にも、「今のうちに借りられるだけ借りておいたほうがいいですよ、借り手が殺到しますから」と伝えていました。実際にその通りの状況になったのはご存じの通りです。もう2週間遅かったら申し込みが殺到して借りるに借りられなくなるところでした。

オフィス周辺への引っ越しに30万円補助

――ウイルスの影響がここまで甚大だと想像できたのはなぜですか?

木谷氏 世界中の人たちが中国とこれだけ行き来している以上、必然でしょう。むしろ難しかったのは、イベント中止の発表や支援策実施のタイミングです。東京と地方では温度差があって、あまり早く動きすぎても空回りする懸念がありました。

――冒頭に在宅勤務の話が出ましたが、社内向けにはどんな施策を打ったのでしょうか?

木谷氏 2月17日に通達したのは、来客と訪問、会食、満員電車への乗車禁止などですね。時差出勤、4時間勤務、帰宅後の在宅勤務といった形態での勤務も認めました。

 その結果、全社員の10%程度が出社すれば最低減の業務が遂行できることが分かったんです。これが分かれば、出社と在宅の比率をコントロールできる。6月からは、部署ごとに在宅率を30~70%でコントロールできるようにしています。

「全社員の25%がオフィスから徒歩圏内に住んでいることが理想」という木谷氏
「全社員の25%がオフィスから徒歩圏内に住んでいることが理想」という木谷氏

――働き方改革が一気に進んだ形ですね。

木谷氏 もう1つ、20年10月末までにオフィスから2km圏内に引っ越す社員に30万円まで補助することを決めました。というのも今回の一件で全社員の約15%が徒歩で出社できるエリアに住んでいることが分かったんです。この比率を上げたい。理想は25%です。そうすると、いざというとき、歩いて出社できる社員だけでも業務がかなり回せるようになります。

――25%が徒歩圏内に住んでいれば、災害時の対応も変わってきますね。

木谷氏 災害などが起きたときも、オフィス近くに住んでいる社員がいれば「状況が落ち着いたらちょっと様子を見て来て」と頼むことができます。職場と住居が近い社員が多いことは、何かにつけてメリットになると考えています。

 今回は新型コロナウイルスという疫病による非常事態でしたが、19年の台風19号のような悪天候や地震といった自然災害時にも有効です。働き方だけでなく、住む場所についても今後は考え方が変わっていくのではないでしょうか。

――新型コロナ対策が社内改革のきっかけになったと言えるでしょうか。

木谷氏 ビジネスモデルや社内の構造を変えるのに、新型コロナウイルスを理由にできるのは確かです。社員にも「変えたいことがあるなら、今のうちに変えろ」と言ってあります。旧来のしがらみに縛られていたことでも「新型コロナウイルスの影響で」と言えますから。口にしづらい雰囲気はあるものの、新型コロナウイルスによる影響は悪い面ばかりではないと思いますね。