緊急事態宣言が解除されて間もない2020年5月28日、クラウドファンディングの「Makuake」で、ある電動モビリティのプロジェクトがスタートした。製品の名は「X-SCOOTER LOM」。瞬く間に支援者を集め、応援購入は1億円を突破した。なぜ、これほどまでに人気を集めたのか。プロトタイプに試乗し、その秘密を探った。
「X-SCOOTER LOM」を開発したのは、和歌山発の乗り物ベンチャー、glafit(グラフィット)。プロジェクト開始から約1カ月後の現在(20年7月6日時点)、募集期間を50日以上残しながら、支援者の数は1000人を超え、応援購入総額は1億円を突破している。価格は支援時期によって違うが、200台用意された10万5000円の応援購入分は早々に売り切れ、現在は11万9000円。クラウドファンディング終了後の一般販売価格は14万9600円を予定している。
実は、グラフィットがクラウドファンディングに挑戦するのは、これが2度目だ。最初のプロジェクトは3年前の17年5月に実施した、折りたたみ可能な電動バイク「GFR-01」。見た目はほぼ折りたたみ自転車でありながら、完全電動走行が可能で、ペダルをこがずに走行できる。ありそうでなかったコンセプトが話題を呼び、GFR-01は3カ月で1284人から1億2800万円もの支援を集めた。これは当時のMakuake応援購入総額の最高記録だった。現在、GFR-01は全国のオートバックスやビックカメラなどで販売されており、累計で約5000台を売り上げている。
そんなグラフィットが次なる挑戦として目を付けたのが、立ち乗り電動モビリティだ。鳴海禎造社長は、「ここ数年で大人が(電動キックボードのような)立ち乗りのモビリティに乗るようになった。この状況を見て、立ち乗りモビリティには受け入れられる土壌がありそうだと考えた」と開発の背景を説明する。ただし、海外の立ち乗りモビリティの状況を見ると、まだまだ課題もある。
大きな課題の1つが、本体の寿命だ。鳴海氏によると、海外のシェアリングサービスで使われる電動キックボードは、機体の交換サイクルが100日程度しかないという。「数カ月で交換・廃棄することが前提だからこそ、あの(貧弱な)機体で回せる」(鳴海氏)。ところが、それでは地球環境に優しいはずの電動モビリティが、少しもエコではなくなってしまう。そこで今ある課題を解決すべく、グラフィットは立ち乗りモビリティにどんな要件が必要なのかを一から考えた。
電動キックボードの弱点を潰した!
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