新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、生活様式の変化が迫られている。新時代の標準となり得る技術は何か、社会はどう変わるのか。社会課題の解決を目指す“リアルテック”に投資先を特化し、コロナ禍においても活発に支援を行うベンチャーキャピタル(VC)、リアルテックファンド代表の永田暁彦氏に聞いた。
永田氏が定義する「リアルテック」とは、「地球と人類の課題解決に資する研究開発型革新的テクノロジー」とのことですが、新型コロナウイルスはまさに地球規模の課題。変革が進んでいるテクノロジーは。
永田暁彦氏(以下、永田) 新型コロナウイルスの影響は、「withコロナ」と「アフターコロナ」の2つの時代に分けて考えることが大切です。今はまさにwithコロナのフェーズ。それはつまり「対新型コロナ」です。メディカル領域のテクノロジー、「メドテック」の動きが活発化しています。具体的には、新型コロナの正確な判定法や効果的な治療方法、ワクチンなどの開発です。新型コロナの抗体医薬品開発は、世界中の製薬会社、ベンチャーが横一線で進めており、日本勢も参入しています。
ワクチンや治療薬の開発後、求められるテクノロジーとは。
永田 ワクチンや治療法が確立されるまでが新型コロナと闘う時代で、それ以降は「ビフォーコロナ」の時代に限りなく戻ると予想しています。本来、基本的に人間は“ありたい方向”へと動いていきます。例えば、withコロナによってリモートワークの導入は加速しました。もちろん、その利便性は否定しませんが、「人と会いたいのに会えない」と我慢している状態の人や、人と会うことに価値を見いだす人が多いのも実情だと思います。リモートワーク下での仕事の非効率化を指摘する声もあり、アフターコロナでは大枠では元の勤務形態に戻っていくと考えられます。リモートワークなどの普及により、東京から地方に拠点を移す人、移した人もいるでしょう。ただ、地方分散の流れは一部の自由な勤務形態の人にとどまると考えています。
逆に、これまで誰もがおかしいと思っていたのに変わらなかったもので、新型コロナの感染拡大を契機に是正されたものは不可逆です。例えば、オンライン診療がその1つ。これまでは通院中の患者に対してしか認められなかったオンライン診療が2020年4月10日以降、初診から利用できるようになりました。患者にとっては通院の手間が省け、院内感染の防止にもつながります。
遠隔診療で重視すべきはセンシング
オンライン診療で注目しているベンチャーの動きは。
永田 投資先の1つであるAMI(エーエムアイ、鹿児島市)は、「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)遠隔聴診プロジェクト」を立ち上げました。専門医がその場にいなくても、看護師などの処置で心音や肺音などの生体音を聞き取れる遠隔聴診システムを新型コロナウイルス感染症に対応する医療機関に提供して支援。同じ病院内でも離れた場所から診察できるので、医療従事者への感染リスクを軽減することが可能です。また、聴診音を可視化して病状を判断できるのもメリットです。
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