マーケティングDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現方法を、AIのスペシャリスト集団「Laboro.AI」が伝授する連載(第1回はこちら)。第2回では、社内でのAI導入に果敢に挑んできた先輩イノベーターたちが、どのように考え、行動してきたかを紹介していく。これまでの常識や先入観にとらわれない柔軟な思考や探究心が、イノベーターには必要になる。

 マーケティング部門をはじめとした各種領域で、これまで先駆者としてAI導入に果敢に挑んできた先輩イノベーターたちは、どのような意思を持ち、どう行動し、DXの壁を乗り越えてきたのだろうか。当社では、これまでAIプロジェクトを共に進めてきたさまざまな業界、さまざまな領域の担当の方々の行動をまとめ、「イノベータージャーニーマップ」として整理した。

【連載】AIで斬る!打倒!マーケティングDX
【第1回】 マーケティングDXってどうやるの? 悩めるマーケターへのAI入門
【第2回】 「AI導⼊の壁」を先駆者はどう超えた? 過去の慣習に縛られるな ←今回はココ
【第3回】 DX導入の要 AIとマーケティング領域をつなぐフレームを獲得せよ

 AIの導入パターンとしては、自社で開発・運用まで内製することもあるだろうが、最新かつ専門的な分野ということもあり、当社のようなAI開発ベンダーがパートナーとして選定されプロジェクトが組まれることが多い。このイノベータージャーニーマップも、企業の担当者がAI導入の必要性を感じてから、当社に出会い、プロジェクト化するまでの発言や行動、心理面や感情の変化、段階ごとに求める情報やタッチポイントをまとめたものだ。

情報収集の方法も大きく変わる(写真はイメージ)
情報収集の方法も大きく変わる(写真はイメージ)

 以下ではAIX(AIトランスフォーメーション)・マーケティングDXを推進するマーケティング担当者にとって関連性があり、また特に重要だと思われる行動や考え方にポイントを絞って紹介していこう。

AI導入イノベータージャーニーマップ(20年7月、Laboro.AI作成)
AI導入イノベータージャーニーマップ(20年7月、Laboro.AI作成)

チームとしてよりも、キーパーソンがけん引

 これまでAI導入を共にしたイノベーターの行動を振り返ってまず気づくのが、意外にもこうしたプロジェクトがチームでの動き出しではなく、1人の担当者の意思や熱意がキーになっているということだ。これには、よく言われる「AIの不確実性」が関係している。

 従来のITシステムと比べたAIの前提として、当初の段階で開発の全体像が示しにくいということ、はっきり言い換えてしまえば「作ってみないとわからない」点が挙げられる。特にディープラーニングをさらに複雑にしたようなアルゴリズムを用いれば用いるほど、「なぜその結果を出力しているのか」が不明瞭になり、こうした状況をさらに招きやすくなる。このように効果の有無が当初の段階で判断できないテクノロジーの導入をチームで検討すれば、「そのAIを入れると売り上げは変わるのか? 業務効率化への貢献は? ROI(投資利益率)はどれくらいなのか?」といった答えの出しようがない質疑が噴出、結論としては「リスクを取るような採択は見送るべきだ」という集団心理が働くのが常だ。

 これに対して1人の担当者の暑苦しいほどの熱意が軸になった動き出しだと、この1人のキーマンが中心になって社内を猪突(ちょとつ)猛進し、徐々に周囲を巻き込みながらプロジェクトチームが形成されていくパターンが多い。AIのような未知の要素を多分に含む新規プロジェクトでは、こうした熱意があることと、一見無謀にも思えるような進め方が、実は社内を説得するための要素になっている。

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