ローソンは2020年5月から同社のプライベートブランド(PB)のパッケージの全面刷新を開始。そのデザインを巡っては、消費者から「分かりにくい」などの意見が寄せられるなど、ネット上で物議を醸している。同社の担当者と、デザインを担当したnendoの佐藤オオキ氏に、デザイン刷新の真意を聞いた。

ローソンは2020年中に、プライベートブランド(PB)全商品およそ700品目を、この統一されたフォーマットのデザインに切り替える
ローソンは2020年中に、プライベートブランド(PB)全商品およそ700品目を、この統一されたフォーマットのデザインに切り替える

 「商品の区別が付きにくい、文字が見にくいといった声を頂くことは、ある程度予想していた。そこに対しては、お客様の声を基に調整することを視野に入れている。ただ、ローソンとして『お客様との長期的で深いつながり』を大切にしたいというメッセージを伝えるため、まずは思い切ったデザインを展開した」。ローソンは2020年5月から同社のプライベートブランド(PB)のパッケージの全面刷新を開始。その陣頭指揮を執ったローソンの藤田和生マーケティング戦略本部本部長補佐は、新しいデザインに込めた思いをこう説明する。

 他社製品と同じように、これまでのローソンのPBのパッケージは、シズル感と分かりやすさを重視して、商品の中身や使用シーンの写真をパッケージ全面に印刷したデザインだった。それを今回は、牛乳などの日常の食品ならベージュピンク、総菜や菓子ならクリーム1色の背景を採用したシンプルなデザインへと移行。商品の中身を説明するビジュアルは油彩タッチのイラストにして、商品の中央に控えめに配置した。その周囲には、例えばビーフカレーなら牛とニンジン、ジャガイモといった、商品に使用している材料や分かりやすいモチーフのアイコンをちりばめている。商品名やキャッチコピーには、手書き風の優しいフォントを使用した。

ローソンの新しいPBパッケージ。牛乳やバターなど定番商品は「L basic」というブランドにまとめた
ローソンの新しいPBパッケージ。牛乳やバターなど定番商品は「L basic」というブランドにまとめた

分かりにくさは売り上げに影響なし

 20年中に、ローソンが扱う商品約3500品のうち、プライベートブランドの全商品およそ700品目が、この統一されたフォーマットのデザインに切り替わる。情報をそぎ落としてすっきりと、しかしながらかわいらしく見せ、店全体に統一感を与えられるパッケージ。ただ、これらの点を重視した結果、それぞれがどんな商品であるかという分かりやすさや、ほかの類似商品との差異は、以前のパッケージと比較すると薄れた。しかも納豆や豆腐などのパッケージは「NATTO」「TOFU」と英語が一番大きく表記されるなど、かなり思い切った表現が一部にはある。

 このデザインに対して「分かりにくい」といった声が寄せられたり、ネット上で意見表明を行うデザイナーが現れて論争となったりするなど、物議を醸している(一部の英語表記メインの商品については、同社の竹増貞信代表取締役社長が「修正をする」と発表した)。

総菜や菓子、ジュースなどは「L marche」のブランド名で、クリームを基調としたパッケージに
総菜や菓子、ジュースなどは「L marche」のブランド名で、クリームを基調としたパッケージに

 一部から批判の声が聞かれる一方で、それが売り上げに悪影響を与えてはいないという。冷凍食品や菓子、牛乳や豆腐、納豆などすでに新しいデザインに切り替わっている商品について、切り替え後の売り上げは順調。同社によれば、例えば冷凍食品は全体で、切り替え後の5月は前年同期比で3割の売り上げの伸びを記録。牛乳や卵、納豆なども1割程度売り上げが伸びている。

 新型コロナ禍の影響で、自宅で過ごすことが増えた消費者が、外食を避けて自宅で食事を取ることになった影響もあり、この売り上げの伸びの要因すべてがパッケージのおかげ、と断定するのは早計だ。とはいえ、「現時点では、パッケージリニューアルによって売り上げが落ちている商品はほとんどない」(ローソンの梅田貴之中食商品本部本部長補佐)。

長期視点で選んだ「雑貨」的なデザイン

 あえてこのシンプルなデザインにした理由とは何か。「短期的な売り上げはもちろん大切だが、本当の狙いはそこにはない。ローソンの商品を通じて得られる体験を、パッケージを皮切りに根本から見直すことこそが一番大事なことだと捉えていた」。デザインを担当したnendo(東京・港)の佐藤オオキ氏は、こう説明する。

 一般的に小売店に並ぶ商品、特にナショナルブランドの商品は、店頭で「一瞬で目立つ」ためのコミュニケーションに力を注ぐことが多い。しかし「群」として見せるPBでは、目立ちすぎるデザインは情報過多になりやすい。いまやコンビニでは店の約5分の1の商品がPB。「すべてのPB商品が『買ってください』という肩肘張ったパッケージであふれかえってしまう状況は、『人への優しさ』や『環境への優しさ』をお客様への約束として掲げているローソンの企業理念とは違う」(梅田氏)

 そこで、まずは一歩引いてシンプルなデザインに整えた。その上で「『ローソンの商品なら生活を豊かにしてくれる』という体験を顧客が得られるデザインを心がけた」(佐藤氏)。

 その体験とは「食卓に並べたとき、わびしさを感じないこと」(佐藤氏)。例えば牛乳やお茶などの紙パック飲料には雑貨のような面影を持たせ、お気に入りの食器と共に朝食のテーブルに並んでいても違和感のないように。家族の夕飯を用意する時間がないときの1品として、コンビニで揚げ物や総菜を買うことも多い時代。そのときに、後ろめたくなく購入でき、そのままでも食卓に並べられるように。そして、お昼にコンビニ弁当を食べるとき、そこに少しでも豊かさを感じてもらえるように……。

 現在、コンビニの来店客は6対4で男性が多いという。より多くの消費者に足を運んでもらい、商品を手に取ってもらえるようにするには、女性客の気持ちに寄り添う必要がある。「女性にも豊かさを感じてもらい、その女性から『ローソンのPBがいいよね』と薦めてもらえるような存在にしよう、と竹増社長をはじめとするチームメンバーとは話し合った」(佐藤氏)

 「PBは『今すぐにも必要、何でもいいから買う』商品のブランドだという認識が買い手にあり、購入に当たって特別な思いも動機付けもない」。佐藤氏は、PBの現状をこう分析する。ユニバーサル性は最低限担保しながら、その上で「誰に届けるか、その人にどう感じてもらいたいか」という意思を持とうと、ローソンとnendoのチームメンバー全員で意識を共有したという。「信号1つ渡ってもローソンで買う。そんな商品群を作っていこうと決め、皆で挑戦した結果のデザイン」(佐藤氏)

 実際に、その意図が明確に伝わった商品事例も生まれた。例えば、発泡酒「ゴールドマスター」。メタリックの青に金色というこれまでのデザインからクリーム色に変更すると、「クラフトビールのようで私にも買いやすくなった」という女性からの意見が多く寄せられ、売り上げが増加した。

 SNSなどでは、牛乳を買ってきたら娘から「この牛乳かわいいね」と褒められたという父親の声など、今までにはない感想が多く投稿されたという。「批判も一定数あり、そこは真摯に受け止めたい。ただ、それ以上にこれほど多くのポジティブな意見を聞くのは、PBを7回リニューアルしてきた中で初めて」(梅田氏)。明らかに、これまでのPBとは違う体験を消費者が実感している。

一歩引くから、人気商品がさらに目立つ

「からあげクン」などの個別ブランドにも、ローソンを想起させる共通要素を加え、緩いつながりを持たせた
「からあげクン」などの個別ブランドにも、ローソンを想起させる共通要素を加え、緩いつながりを持たせた

 そして、このPBのデザイン変更には、もう1つの狙いがある。それが「ヒット商品を生む土台づくり」(佐藤氏)だ。

 佐藤氏から見ると、ローソンは「突出した一点モノを数多く持つ専門店の集まり」という印象だったという。「からあげクン」や「悪魔のおにぎり」、そして最近では「バスチー」(バスク風チーズケーキ)などで、「100点満点を超えるようなスター商品が棚の中にいくつもある」(佐藤氏)。

 一方で、「そのスターが、ローソンというブランド全体をけん引しているかというと、そうでもなく、バラバラな状態。ブランド全体にそのイメージが影響するような波及効果が薄いのではないか」(同)と見ていたという。

 個々の強い商品がローソンのブランド全体をけん引するために必要なのは、専門店らしさは失わずに、どの商品を見てもローソンを感じてもらえるようにすること。そのために、からあげクン、「おにぎり屋」「ウチカフェ」などの個別ブランドのロゴには、ローソンのロゴからシルエットとLのマークを抽出して配置。各ブランドとローソンとのつながりを持たせた。

 加えて「スター商品が活躍できるよう、店頭を一度リセットする」(佐藤氏)ことも、今回のPBデザインの統一で同時に狙った。均一で整頓された背景を用意して、スター商品には、より目を引くパッケージをまとってもらおうというわけだ。

 周囲の商品が主張しすぎる雑然とした環境では、いくらスター商品でも目立たない。だが、整えられた背景の中にスター選手を置けば、その存在は一層際立つ。今後、売れる商品が出てくれば、意図的に目立つパッケージデザインへと機動的に作り変えていく計画だという。

 今回のパッケージデザイン変更は、ローソンが今後、多くの人に愛される商品を継続的に作り出し、今以上に愛されるブランドになるためのスタートにすぎない。顧客の声に柔軟に対応しながら改良を続けるだけではなく、ローソンとnendoは今後、商品開発においても協力しながら、ローソンPBのさらなる強化を進めるという。

(写真/Akihiro Yoshida)