その体験とは「食卓に並べたとき、わびしさを感じないこと」(佐藤氏)。例えば牛乳やお茶などの紙パック飲料には雑貨のような面影を持たせ、お気に入りの食器と共に朝食のテーブルに並んでいても違和感のないように。家族の夕飯を用意する時間がないときの1品として、コンビニで揚げ物や総菜を買うことも多い時代。そのときに、後ろめたくなく購入でき、そのままでも食卓に並べられるように。そして、お昼にコンビニ弁当を食べるとき、そこに少しでも豊かさを感じてもらえるように……。

 現在、コンビニの来店客は6対4で男性が多いという。より多くの消費者に足を運んでもらい、商品を手に取ってもらえるようにするには、女性客の気持ちに寄り添う必要がある。「女性にも豊かさを感じてもらい、その女性から『ローソンのPBがいいよね』と薦めてもらえるような存在にしよう、と竹増社長をはじめとするチームメンバーとは話し合った」(佐藤氏)

 「PBは『今すぐにも必要、何でもいいから買う』商品のブランドだという認識が買い手にあり、購入に当たって特別な思いも動機付けもない」。佐藤氏は、PBの現状をこう分析する。ユニバーサル性は最低限担保しながら、その上で「誰に届けるか、その人にどう感じてもらいたいか」という意思を持とうと、ローソンとnendoのチームメンバー全員で意識を共有したという。「信号1つ渡ってもローソンで買う。そんな商品群を作っていこうと決め、皆で挑戦した結果のデザイン」(佐藤氏)

 実際に、その意図が明確に伝わった商品事例も生まれた。例えば、発泡酒「ゴールドマスター」。メタリックの青に金色というこれまでのデザインからクリーム色に変更すると、「クラフトビールのようで私にも買いやすくなった」という女性からの意見が多く寄せられ、売り上げが増加した。

 SNSなどでは、牛乳を買ってきたら娘から「この牛乳かわいいね」と褒められたという父親の声など、今までにはない感想が多く投稿されたという。「批判も一定数あり、そこは真摯に受け止めたい。ただ、それ以上にこれほど多くのポジティブな意見を聞くのは、PBを7回リニューアルしてきた中で初めて」(梅田氏)。明らかに、これまでのPBとは違う体験を消費者が実感している。

一歩引くから、人気商品がさらに目立つ

「からあげクン」などの個別ブランドにも、ローソンを想起させる共通要素を加え、緩いつながりを持たせた
「からあげクン」などの個別ブランドにも、ローソンを想起させる共通要素を加え、緩いつながりを持たせた

 そして、このPBのデザイン変更には、もう1つの狙いがある。それが「ヒット商品を生む土台づくり」(佐藤氏)だ。

 佐藤氏から見ると、ローソンは「突出した一点モノを数多く持つ専門店の集まり」という印象だったという。「からあげクン」や「悪魔のおにぎり」、そして最近では「バスチー」(バスク風チーズケーキ)などで、「100点満点を超えるようなスター商品が棚の中にいくつもある」(佐藤氏)。

 一方で、「そのスターが、ローソンというブランド全体をけん引しているかというと、そうでもなく、バラバラな状態。ブランド全体にそのイメージが影響するような波及効果が薄いのではないか」(同)と見ていたという。

 個々の強い商品がローソンのブランド全体をけん引するために必要なのは、専門店らしさは失わずに、どの商品を見てもローソンを感じてもらえるようにすること。そのために、からあげクン、「おにぎり屋」「ウチカフェ」などの個別ブランドのロゴには、ローソンのロゴからシルエットとLのマークを抽出して配置。各ブランドとローソンとのつながりを持たせた。

 加えて「スター商品が活躍できるよう、店頭を一度リセットする」(佐藤氏)ことも、今回のPBデザインの統一で同時に狙った。均一で整頓された背景を用意して、スター商品には、より目を引くパッケージをまとってもらおうというわけだ。

 周囲の商品が主張しすぎる雑然とした環境では、いくらスター商品でも目立たない。だが、整えられた背景の中にスター選手を置けば、その存在は一層際立つ。今後、売れる商品が出てくれば、意図的に目立つパッケージデザインへと機動的に作り変えていく計画だという。

 今回のパッケージデザイン変更は、ローソンが今後、多くの人に愛される商品を継続的に作り出し、今以上に愛されるブランドになるためのスタートにすぎない。顧客の声に柔軟に対応しながら改良を続けるだけではなく、ローソンとnendoは今後、商品開発においても協力しながら、ローソンPBのさらなる強化を進めるという。

(写真/Akihiro Yoshida)