アマゾンや楽天など大手ECは、倉庫や配達サービスなど独自物流網の強化を急いでいる。傘下にYahoo! ショッピングやLOHACOを束ねるソフトバンクも例外ではない。同社発のスタートアップMagicalMove(マジカルムーブ、東京・港)は、AI(人工知能)を使った宅配の利便性向上を目指している。

ソフトバンク系のMagicalMoveは、AIを活用した宅配サービスを展開している
ソフトバンク系のMagicalMoveは、AIを活用した宅配サービスを展開している

 2014年。ソフトバンクグループの社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」の発表会場で孫正義会長兼社長は「いいね、よしやろう」とゴーサインを出した。やや緊張しながらプレゼンを終えた武藤雄太氏は胸をなで下ろした。当時34歳、ソフトバンクで携帯電話のサービス管理の仕事を手掛けていた。現在は、ソフトバンク子会社の物流スタートアップ、マジカルムーブの社長を務めている。

 宅配危機という言葉は今ほど広がっていなかったが、ECサービスが急激に拡大する中で、物流網の課題が噴出することは明らかだった。「大手の宅配事業者に任せているだけでは、ECのユーザー体験が良くならず、日本のECが停滞してしまう。そんな危機感をプレゼンで訴えた」と武藤氏は振り返る。13年にYahoo! ショッピングの出店者手数料を無料にするなど、グループ全体でEC事業を加速していたこともあり、「この事業は我々のグループにとって肝じゃないか、という話になった」(武藤氏)。

マジカルムーブの武藤雄太社長。ソフトバンク内で2015年にサービスを立ち上げたが、さらなる事業拡大を目指し、17年に会社を設立した
マジカルムーブの武藤雄太社長。ソフトバンク内で2015年にサービスを立ち上げたが、さらなる事業拡大を目指し、17年に会社を設立した

朝6時から夜中0時まで配送

 マジカルムーブが手掛ける物流サービス「Scatch!(スキャッチ)」は、朝6時から夜中の0時まで、1~2時間幅の時間指定ができるのが特徴。対象エリアは、東京都内と大阪市内の一部など。アスクルは個人向けネット通販「LOHACO(ロハコ)」で早朝や深夜の配送、ファッションECサイト「LOCONDO(ロコンド)」は最短で即日配送できるファーストクラス便、JALエービーシー(東京・中央)は荷物宅配サービスでスキャッチを利用している。

 大手から中小まで多数の物流事業者が存在する中で、マジカルムーブの優位性は何か。武藤氏は、早朝から夜中まで受け取れる「タイムゾーンの広さ」、最短で即日に届ける「スピード」、効率化や利便性を高めるための「テクノロジー」の3つが特徴と説明する。

 タイムゾーンやスピードの部分を実現するために、実際の配送業務についてはフットワークの軽い中小規模の配送事業者に委託している。物流業界の人手不足が問題視されている中で、早朝や深夜に配達できるドライバーを探すのは困難がありそうだが、「物流業界はあくまでもサービス業。午前9時~午後5時を守るという業界ではない。早朝や夜中の配送を得意とする会社もある」(武藤氏)。

 業務用の物流事業者は、2次請け、3次請けといった旧来の多重構造が残り、非効率を生み出しているといわれる。マジカルムーブは「直接ドライバーを抱えている信頼できる事業者に委託している」と武藤氏は話す。

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