アサヒグループホールディングスは、AI(人工知能)を使ったパッケージデザイン生成システム「AIクリエーターシステム」を開発。ビールや飲料といった同グループの商品パッケージのデザイン過程に試験的に取り入れる。同システムを開発した狙いとその仕組みを聞いた。

アサヒグループが開発したパッケージデザイン生成システム「AIクリエーターシステム」の概念図
アサヒグループが開発したパッケージデザイン生成システム「AIクリエーターシステム」の概念図

 このシステムは、アサヒグループがAIのサービス開発を手がけるCogent Labs(コージェントラボ、東京・港)と共同開発したもの。AIクリエーターシステムという1つのシステムだが、内部は2つに分かれている。1つはインプットされた素材から複数のデザイン案を自動で生み出す「デザイン生成システム」、もう1つがAIを使ってその案を検討、評価し、スコアを付ける「デザイン評価システム」だ。これらが連携し、パッケージデザインの生成、出力までを1つの作業として行う。

自動生成したデザイン案をAIが評価する

 その過程をもう少し詳しく説明しよう。まず、デザイン生成システムに素材となる画像、コピー、ロゴを入力する。これらの入力を行うのはオペレーター、つまり人間だ。

 画像は何でもよいわけではなく、権利をクリアした、パッケージに素材として使えそうな画像をあらかじめ選別しておかなければならない。オペレーターが入力した画像には、画像認識技術によって自動的に関連する用語がタグ付けされ、データベース化される。

 コピーは、対象の商品を説明するための言葉。プロモーションで使うキャッチコピーのような文章ではなく、単語に区切って入力する。「夏」「朝」「女性向け」「さわやか」といった形だ。ロゴは、そのものずばり、企業名や商品名を表すロゴデザインだ。

 デザイン生成システムは、これら3つの素材のうち、コピーの内容に関連しそうな画像をピックアップしていく。さらに、その画像の色味などを判断し、背景色などを調整した後、パッケージのデザイン案としていくつかの画像を生成する。

 ただし、この時点ではある程度のセオリーにのっとってランダムに生成した画像でしかない。ここで活躍するのが、AIクリエーターシステムの後段、デザイン評価システムだ。生成されたデザイン案はこの評価システムによってそれぞれ良しあしを採点され、そのスコアで決定案を選出する。

 このデザイン評価システムに、ディープラーニングが使われている。アサヒグループでは、評価の仕組みを定めるに当たり、テスト用のラベルを同システムで3000枚ほど作成。これを社外のクリエーター約300人に見せてA/Bテストを実施した。その結果をデザイン評価システムに学習させ、人間に近い評価ができるようにしている。もちろんA/Bテストは一度で終わるものではない。適宜実施し、その結果をデザイン評価システムに学習させていくことで、評価の精度を高めていく。

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