新型コロナショックで臨時休業や営業時間短縮を余儀なくされ、リアル店舗の減収が大きな痛手となっているアパレル業界。この非常事態を乗り切る一手として、今熱い視線を浴びているのが、バニッシュ・スタンダードのアプリサービス「STAFF START(スタッフスタート)」だ。コロナ禍の中でもEC売り上げを伸ばすアパレル企業の秘密とは?

「STAFF START(スタッフスタート)」の導入企業は現在も増加中。2020年5月にはデイトナ・インターナショナルが展開するアパレルブランド「FREAK'S STORE(フリークスストア)」や、ビジネスウエア専門店のAOKIも参加
「STAFF START(スタッフスタート)」の導入企業は現在も増加中。2020年5月にはデイトナ・インターナショナルが展開するアパレルブランド「FREAK'S STORE(フリークスストア)」や、ビジネスウエア専門店のAOKIも参加

“評価のオムニチャネル化”で急成長

 バニッシュ・スタンダードが展開する「STAFF START(スタッフスタート)」は、リアル店舗の販売員がコーディネート写真を投稿するなど、ECサイトにデジタル接客を組み入れ、EC売り上げへの貢献度を可視化して販売力を評価する仕組みで、一連のシステムは20年4月に特許となった。さらに、売り上げに応じてインセンティブ(成果報酬制度)を付与することで、販売員個々のモチベーションアップにつなげるのが大きな特徴だ。インセンティブは当初一部の企業だけだったが、最近は大半の企業が導入。コーディネート経由のEC販売額に対して数パーセントを給料に加算しているという。

スタッフスタートのアプリで商品をスキャンするだけで、コーディネート写真とECサイトをひも付けて投稿できる
スタッフスタートのアプリで商品をスキャンするだけで、コーディネート写真とECサイトをひも付けて投稿できる

 これまでアパレル各社はデジタル時代に対応し、EC強化を図ってきた。ところが、リアル店舗とネット通販の事業が分断されていたため、オムニチャネル化の実現には大きな壁が立ちはだかっていた。その主要因は、ECに販売員が存在しなかったことだ。「リアル店舗に近づけるためには、ECサイトに販売員を立てることが必要。そして、販売実績に対する評価をオムニチャネル化することが重要だ。小売りの就業人口の約9割を占める販売員を味方につけてECで売るというのが、スタッフスタートの肝」と、バニッシュ・スタンダードの小野里寧晃CEOは説明する。

 販売員評価システムには、売れ行きの悪い商品の消化率を高め、利益を確保する狙いもある。貢献した販売員にはポイントが多く付与される。「アパレルの最大の課題は売り上げよりも利益の確保。在庫の消化率が悪い商品はセール後に焼却処分されるが、プロパー価格で販売できれば、高利益体質へと改善できる。そのため、スタッフスタートでは商品を偏差値化し、売れ行きの悪い商品を売った販売員を高く評価するロジックも含めた評価システムを構築している」(小野里氏)。

 サービス開始から3年、2019年1~12月にスタッフスタート経由の売上総額は前年同期比3倍の約412億円を達成した。導入ブランド数は800を超え、倍々ゲームで伸びている。オンワードホールディングスやベイクルーズグループ、ビームス、アダストリア、パルグループといった主要アパレルのほとんどが導入。各社が展開するECにおけるスタッフスタート経由の平均売り上げシェアは約47%で、中には90%というアパレル企業まで現れた。ちなみに1人の販売員の月間最高売り上げは約8000万円、1回の投稿の最高売り上げは約600万円。評価のオムニチャネル化の効果は絶大だ。「リアル店舗での販売員の接客の威力が、ECサイトでも大いに発揮されている」(小野里氏)という。

スタッフスタート経由のEC売り上げは19年で約412億円に達するなど、爆発的な勢いで成長している
スタッフスタート経由のEC売り上げは19年で約412億円に達するなど、爆発的な勢いで成長している

コロナ禍でアパレルのEC化を後押し

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