新型コロナウイルスの感染拡大でテレワーク移行が進む中、チームとしてコミュニケーションをとる難しさなどに直面している企業は少なくない。オフィスで対面で働くことが難しい今、チーム力を保ちながら成果も着実にものにするにはどうすればいいのか。5年前からテレワークを実践するIT批評家の尾原和啓氏に、秘訣を伺った。

(写真/的野 弘路)
(写真/的野 弘路)

——もう5年間もテレワーク生活を続けていらっしゃいます。なぜ、東京のオフィスに縛られない新しい働き方を始めようと思ったのでしょうか。

尾原和啓氏(以下、尾原氏) 現在、シンガポールやインドネシアのバリ島をベースに暮らしていまして、年間85フライトで世界中を飛び回りながら、書籍を執筆したり顧問企業のメンター役を務めたりしています。

 このような働き方に切り替えたのは、世の中に2つの大きな変化があったからです。1つは、インターネットの接続スピードが劇的に速くなったこと。モバイル環境さえ用意すれば、安価にいつでもどこでも仕事ができるようになりました。もう1つは、格安航空会社(LCC)の台頭により、移動コストが激安になったことです。シンガポールを深夜にたって翌早朝に日本に着く便もあり、前夜にクライアントから求められれば翌日午前中には打ち合わせができます。しかも、安いチケットなら往復3万円で買えてしまいます。

 現在住んでいるバリの家は、ベッドルームが2つありプライベートプールも完備していて、おまけに街の中心へわずか約10分で行けます。しかも、週3回家の掃除などをやってくれるお手伝いの方を雇っても、家賃はわずか10万円。航空券とセットでも月13万円で済むのです。

 だったら、世界中のどこで仕事をしてもいいと思いませんか。私の場合、どこで働いてもいいなら日常を非日常にした方が楽しいと考え、リゾート地に居を構えることにしました。自然と触れ合える場所の方がクリエイティビティーは増しますから。実はバリ島には、私のようなリゾートワーカーがたくさん暮らしています。共有スペースで仕事をしていると、よく隣にシリコンバレーの中学校向けにリモート授業をしている先生がいたり、その隣にパリのヨガ教室でリモートレッスンをしているトレーナーがいたりするんです。彼ら彼女らの中には、リゾート地を転々としながら働いている人もいます。

インドネシア・バリ島を本拠地にリゾートワーカーとして働く尾原和啓氏(写真/尾原 和啓氏)
インドネシア・バリ島を本拠地にリゾートワーカーとして働く尾原和啓氏(写真/尾原 和啓氏)
IT批評家 尾原和啓(おばら かずひろ)氏
1970年生まれ、京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アンド・カンパニー、NTTドコモ、リクルート、ケイ・ラボラトリー(現KLab)、サイバード、オプト、Google、楽天など14回の転職を経験し、2015年にIT執筆家として独立。5年前からインドネシア・バリ島およびシンガポールを拠点に、人と事業を紡ぐ「カタリスト」(触媒)役として活動。『ITビジネスの原理』(NHK出版)、『どこでも誰とでも働ける』(ダイヤモンド社)などを執筆。最近は隠れた才能の発掘に自ら力を注いでおり、共同執筆によるベストセラーも多数。代表作は『アフターデジタル』(日経BP)、『ディープテック』(日経BP)など。世界中のテクノロジー業界の識者たちと徹底的に議論を重ねながらテクノロジーの進化が世の中をどう変えるか日々研究している。IT大手各社のワークスタイルやツール活用に造詣が深く、「DoよりBe」などテレワーク時代における新しい働き方のセオリーにも一家言ある。

 今、仕事で重視しなければならないことが大きく変わってきているように感じています。従来は、決まった問題をひたすら「早く」「正確に」「安く」解決することが求められました。そのために、みんなで同じ場所に通って、号令をかけて一斉に業務に向き合うのが効率的だったわけです。働く場所が決まっているので、住む場所も子供の教育スタイルも縛られてきました。

 ところがAI(人工知能)やロボットの登場で、オフィスで私たちが向き合ってきた業務の大半に私たちは必ずしも向き合う必要がなくなりつつあります。これから人間に求められる仕事は、まだ決まっていない問題を定義したり、問題が解決される未来を考えたりすることなんです。

 そのためには、日々イノベーションを起こさなければなりません。私は、イノベーションとは“遠い”存在同士をつなぎ合わせることだと定義しています。できるだけ遠くにいる人と出会いやすく刺激を受けられる場所。それが私にとっては、シンガポールやバリ島でした。

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