回転すしチェーンのスシローグローバルホールディングス(大阪府吹田市)が、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けながらも、香港で着実にファンを増やしている。1号店を佐敦(ジョーダン)地区にオープンしたのは、デモが熱を帯び始めた2019年8月。それから矢継ぎ早に展開し、3店舗まで拡大した。人気の秘密を探った。
香港のスシローの店舗を訪れる客層は、9割以上が香港人。日本人観光客を目にすることは少ない。ジョーダンの店内では広東語が飛び交い、香港人ファミリー層や20代カップルなどの利用が目立つ。
現地法人である香港壽司郎有限公司(SUSHIRO HONGKONG LIMITED)の代表を務める総経理の荒谷和男氏は、「直球の、日本人が好むような特に生のネタが売れている」と話す。当初は変わりすしやロールすしなどの種類に力を入れたがあまり売れなかったことから現在はメニューから外している。メニューの中身は香港向けに特別にカスタマイズしていないという。
香港は平均9枚、アジアで一番多い
アジア各国で回転すしを展開するスシローは、現在韓国と台湾にそれぞれ16店舗、シンガポールと香港でそれぞれ3店舗ずつ、計38店舗を運営している。香港では大トロや中トロなどのマグロ系が人気なのに対し、台湾はサーモンやホタテ、エビなど生より炙(あぶ)ったものがよく売れる。一方韓国はサーモンや白身、シンガポールの場合はてんぷらやうどん、ラーメンなどが売れ筋。国や地域ごとに特徴があるという。
香港の店舗には、日本のスシローがグローバルで仕入れているすしネタの中から厳選されたものが送られてくる。産地はさまざまで、養殖のトロならオーストラリア、本マグロや大トロなら地中海といった具合だ。運搬は船と一部航空便を使う。お米は日本で精米したものがチルド便で香港に届けられるのだそうだ。
「1人当たりの食べる枚数が、アジアで一番多いのが香港。他の国は平均8皿前後だが香港は9皿。かといって安い皿が多く出るわけではなく、マグロのような高いすしネタが好まれる」(荒谷氏)。コストパフォーマンスに敏感な香港人は、原価は高くて利益が少ないネタを見抜いて食べる傾向が強いのだというから驚きだ。
日本のスシローでは、スマートフォンアプリによる席予約と当日券を店頭で発券して番号順に席を案内される2つの入店方式がある。香港も当初は同様の方式をとっていた。当⽇受付の待ち時間は、最⼤で「240分待ち」になっていたほどだ。
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