新型コロナウイルスの感染拡大防止のため外出制限下にあるフランス。外での買い物は生活必需品のみが許される最も厳しい状況からは脱しつつあるが、多くの企業が事業存続を危ぶまれている。そんな中、需要が増える意外な商品も。生き残りを懸け、試行錯誤する企業を現地からリポートする。
非常事態宣言から2カ月ほどが過ぎたフランス。今なお毎日数百人の命が新型コロナウイルスにより失われ続け、5月4日には2万5000人を超えた。それでも外出制限の効果か感染者の数や亡くなる人の数は減少傾向にあり、5月11日からは外出制限が段階的に緩和されて商店の再開店が進むとみられる。しかし、レストランやカフェ、大型ショッピングセンターなどの再開はまだ先。増え続ける失業者、息絶え絶えの企業、かつてない経済下降に混乱しかない今、命を守りながらの試行錯誤が続く。
外出制限下にあった中では、外で購入できるものは基本的に必要最小限の「生きるために必要なもの」のみ。手に入れられるのは地味なものばかりだった。小売店はパン屋、肉屋、魚屋、青果店、チーズ屋などは開店してよいが、チョコレート専門店、お茶専門店、生花店などは許されていない(5月11日以降は順次営業が進む見込み)。これらが欲しければ、スーパーで手軽な菓子やお茶、作り置きの花束、野菜の種を買うしかない。もしくは、時間がかかること、届かないかもしれないことも覚悟でネットオーダーをすることはできる。家具屋は駄目だが日曜大工の店はOK。レストランでも持ち帰りだけは許されている状況だ。
そんな中でも、いやそんな中だからこそ、いつもより何倍も必要とされ、商品不足に陥っているものもある。生き残りを懸けて知恵を絞る、フランス企業の様子をリポートする。
人も醸造所も救う、ワインからできた消毒アルコールジェル
公共の場にもスーパーマーケットにも今や必ず設置されている消毒アルコールジェル。パリでは入り口に入場者数をコントロールする警備員がいて、人が入場するたびにジェルを手に擦り込ませるよう指示をする。「どうぞマダム」「ありがとうムッシュー」とマスクの下からお互いに声をかけ合いながら。病院でも警察でも同じ、人が集まる所には必ず消毒アルコールジェルがある。
消毒アルコールジェル不足は新型コロナ騒ぎが始まってすぐ、1カ月もたたずに始まった。フランスの南西、オクシタニ地方でも、すべての薬局やスーパーから消毒アルコールジェルが姿を消した。困り果てたオクシタニのある市長が、この地に1878年からある家族経営のワイン蒸留業者「アルボウ」に相談を持ちかける。「消毒アルコールジェルのためのアルコールを、ワインで作ることができないか」と。アルボウはそれと同時に、同じくワイン産地のガイヤックにあるパートナーのワインメーカーからも「自分が住む地域では薬局が必死になってアルコールを探しているのだが、助けることはできないか?」と尋ねられていた。
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