2019年6月に香港で始まった逃亡犯条例に反対するデモは、やがて民主化を求めるデモへと発展した。ようやく落ち着き始めた同年12月、今度は中国・武漢で発生した新型のコロナウイルスが香港に襲いかかった。激動の最中、実は市民が着用している「マスク」の色に“ある変化”が生じていたことを、ご存じだろうか。
香港のデモに関する報道を通じて、日本人の目に留まったのは恐らくマスクを着けた市民の姿だったのではないだろうか。19年6月から始まった「逃亡犯条例反対デモ」は、数カ月の後に民主化デモへと発展。当初デモに参加する人々がマスクをし始めたのは、当局による個人の特定を避けるためだった。しかし、やがて民主派の色の象徴として、黒いマスクを着用するデモ参加者が増えていくことになる。
なぜマスクの色が変わったのか
「デモの現場で黒いマスクが配られることもあった。日本から輸入された竹炭マスクも使われていた。広東省から来ているものもあると聞いた」(デモに参加していた20代女性)
こうしたことから19年9月26日、マスクやヘルメット、黒Tシャツ、傘といった民主化デモに活用されるグッズの香港への配達を中国政府が主に広東省の企業に対して禁止した。さらに10月4日には「覆面禁止法」を制定し、デモ参加者がマスクを着用することすらも禁じた。同法に対しては11月18日、香港高等法院(高裁に相当)で違憲判決が下されたものの、翌19日には中国全人代の報道官が「香港の法律が、香港基本法に違反していないか判断できるのは全人代常務委員会だけだ」として反発。落としどころの見えない民主化デモと相まって、マスク問題は泥沼の様相を見せていた。
逃亡犯条例や覆面禁止法の制定を推進したのは、香港政府のトップである林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官だ。その林鄭氏が年明けの20年1月25日、新型コロナウイルス対策のため、マスク姿で記者会見場に現れた。デモは沈静化していたとはいえ、禁じていたはずのマスクをしていたことに多くの市民が首をかしげたようだ。
同日、香港政府は新型肺炎に対して緊急事態を宣言。以来、民主化デモはほぼ街中から姿を消した。一方で、人々のマスクの色が「青」に変わった。
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