メルカリは、自社が有する月間アクティブユーザー(MAU)1500万人超分の二次流通データをEC・小売事業者などに開放する。利用者の属性や購買行動などを基に、「一次流通の商品開発やマーケティングの支援を目指す」という。同社がデータ連携を積極化する狙いや効果を執行役員VP of Business Operationsの野辺一也氏に聞いた。
メルカリが二次流通のデータを開放し、ECやメーカーなどの一次流通データと連携させる狙いは。
野辺一也氏(以下、野辺) メルカリの最大の目的は、年間約5000億円になるGMV(総流通額)のさらなる成長にあります。出品数を増やすことが重要であり、そのためには出品のしやすさがカギになります。
そこで必要になるのが、ECや小売り、メーカーが持つ一次流通のデータです。連携することで商品カタログのデータをメルカリで利用できるようになります。メルカリのIDとECなどのIDを連携すれば、自分で購入したものをメルカリに出品する際に細かい商品情報を打ち込む手間が省けます。
説明が少ない商品の場合、売り手と買い手の間で質問などのやり取りが何度も発生するため、取引のスピードは遅くなりがち。商品情報が充実することで、商品の回転が速くなります。さらに、値付けをする際にデータから相場が表示され、取引が成立しやすくなる効果も期待できます。一方、買う側にもメリットがあります。出品商品に情報がしっかりひも付いていれば、似た商品などをレコメンドされやすくなり、マッチング率が向上します。
一次流通側にとって、データを相互にやり取りするメリットは。
野辺 メルカリは、サービス開始から約6年半が経過し、数十億規模の商品に関するデータやユーザーの属性・行動に関するデータを保有しています。小売りやメーカーなどの一次流通企業だけでは得られないもので、ユーザーに許諾を取った上で、また個人情報には最大限の配慮をした上で、企業に提供していきたいと考えています。
まず、想定しているのは購入履歴の共有です。メルカリのIDと一次流通企業が持つユーザーIDを連携し、それぞれのアカウントが持つ購入履歴を共有することで、例えば商品のライフサイクルの可視化が可能になります。一次流通のデータだけでは、新品の商品を「いつ買ったのか」は分かっても、「いつ手放した(不要になったのか)」は分かりません。
似たような商品や新作を買ったタイミングなどから類推できるかもしれませんが、メルカリで「出品した」という情報があれば、不要になったタイミングを正確に捉えられます。それにより、個人個人の購買思考をより緻密に把握でき、一次流通企業は自社ECや店舗などで顧客に合わせた商品提案が可能になります。例えば、アパレルや化粧品の場合、従来はショップスタッフが常連の行動を捉えてレコメンドをしていました。こうした属人的なサービスを、データを基にできるようになるかもしれません。
商品開発や販売促進にもつながる
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