JR東日本ウォータービジネス(東京・品川)は2020年3月24日、AI(人工知能)を搭載したインバウンド向け多機能自販機の実証実験を始めた。英語など4カ国語に対応し、外国人旅行客におすすめの飲み物を紹介したり、駅構内を案内したりする。新たな購買体験を付加することで、インバウンド需要を取り込む狙いだ。
タッチパネルで「あなたへのおすすめ」をタッチすると、パネルの右上にあるカメラで、利用者の性別と年齢層を識別。識別した属性、外の気温、時間帯などに応じて、AIが「仕事や勉強で忙しい人には、こちらがおすすめです」といった具合に、商品を案内する。日本語以外に、英語、中国語(簡体字と繁体字)、韓国語に対応する。
同社がおすすめ機能をインバウンド向けに搭載するのは初めて。新型コロナウイルスの影響は避けられず、事態の回復を待つ必要はあるが「この機能をインバウンドが利用してくれるのか、ニーズはあるのか検討していきたい」とJR東日本ウォータービジネス営業本部自動販売機事業部の北澤美里氏は話す。
「AIさくらさん」がご案内
2020年3月24日に上野駅に設置したのを皮切りに、東京駅、新宿駅、秋葉原駅に順次設置した。高輪ゲートウェイ駅前特設会場「Takanawa Gateway Fest(高輪ゲートウェイフェスト)」にも設置予定だが、ここで開催予定だったイベント延期を受け実証実験の開始も延期している。
AIは、ティファナ・ドットコム(東京・目黒)が提供するAI接客システム「AIさくらさん」を採用した。「東日本旅客鉄道(JR東日本)が18~19年にかけてAIさくらさんで実証実験を行ったため、駅構内の案内の会話スキルが既にある」(北澤氏)ことが理由だ。AIは場数を踏むことで学習を積み重ね、対応できる会話数などが増える。ゼロからAIに学習させるより効率的だ。
AIさくらさんは、自販機に取り付けられた15インチのタッチパネル内で、パネル操作や口頭での質問に対して商品の紹介や乗り換え案内などを行う。事前の調査で定点観測をしたところ、広告などを流していたモニターを何度もタッチしている人が多くいたという。「おそらく訪日外国人の多くが駅などにある案内端末に慣れており、モニターがあると案内端末だと思い込み、タッチしているのではないか」と北澤氏は話す。
口頭での質問ははっきりしないものでも、AIが予測変換し質問を聞き取る。学習済みの質問であれば最適な答えを表示し、そうでない曖昧な質問にも何かしらの返答をする。「ポンジュース」など商品名を話しかければ、その商品の情報が表示されるが、「さわやかな飲み物」など曖昧なものには商品カテゴリーを表示するといった具合だ。
受け付けた質問はすべてデータ化し、蓄積される。返答できなかった質問も、回答を学習させれば、反映に時間は要するものの、答えられるようになる。「半年の実証実験中もできる範囲で精度は上げていく」(北澤氏)という。
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