作業服大手のワークマンが2020年3月18日、前代未聞の“変身店舗”を公開した。毎日定刻になると、職人向けのワークマンからカジュアル業態のワークマンプラスへ、ワークマンプラスからワークマンへと、ボタン一つで看板と店内が変化する。その間、わずか2分。店の装いを変えて客層を広げ、職人客と一般客の二兎を追うという野心的な作戦だ。
店の中でスゴイことが!?
黄色と黒のロゴに「WORKMAN」の文字。ロードサイドでおなじみのあの看板が、突如消えた──。代わりに「今、店の中でスゴイことが起きてます!」「変身中」と表示されるや、あっという間に、スタイリッシュなワークマンプラスのロゴへと切り替わった。近寄って看板を見上げると、かつての列車案内版のようにパタパタ式になっている。ワンタッチで看板の文字を切り替えられる仕掛けが施されていた。
ここはJR大宮駅西口から4キロメートルほど離れた住宅地。ワークマンさいたま佐知川店(さいたま市)が「W’s Concept Store さいたま佐知川店」という名の“変身店舗”にリニューアルし、2020年3月26日にグランドオープンする。
「変身中」という言葉通り、毎日10時と16時30分に店名が変わる。営業時間は7時~20時。つまり、7時~10時はワークマン、10時~16時30分はワークマンプラス、16時30分~20時はワークマンという、異色の店舗が誕生する。
大型モニターに「変身ムービー」
変わるのは看板だけではない。8枚並んだ店内の大型モニターに「変身ムービー」が流れるのだ。10時になったのを合図に「ワークマンからワークマンプラスに変身する時間でしょ!」という特大テロップが画面に踊り、女性に急かされながら、作業服姿の男性がカジュアルなウエアに着替えて外出の準備をする。一方、16時30分になると「ワークマンプラスからワークマンに変身する時間でしょ!」と映し出され、テントを張ってくつろいでいた男性が、慌てて作業服に着替える。
変身ムービーと連動するように、壁をよじ登るように置かれた巨大なマネキンの “動作”も変わる。マネキンと向き合うように立てかけた縦長モニターの映像が、時間によって切り変わり、同じマネキンがあるときはボルダリングに挑み、あるときはビルのガラス清掃に励んでいるように見える。変身ムービーとマネキンを巧みに使って、ワークマンの商品はオン、オフ両方で着こなせるというメッセージをコミカルなタッチで表現したのだ。
変身ムービーが終了すると、店内の照明や香り、BGMが一気に変わる。例えば、ワークマンの時間帯は白く明るい昼光色の照明で、洗い立てのシャツのような清涼感ある香りで店内を包む。ワークマンプラスの時間帯は、柔らかい暖色系の照明とベルガモットティーを思わせる香りでリラックスタイムを演出する。
店内のBGMは1日3回変わる。“朝のワークマン”では、ロックやインディポップなどモチベーションを高める曲を、“日中のワークマンプラス”では落ち着いたアコースティックナンバーを中心にセレクト。“夜のワークマン”は明日も頑張ろうと思えるようなノリのいい楽曲を流すなど、来店客の気分に合わせて空間全体をコーディネートする。
なぜ変身店舗に挑んだのか
なぜ、ワークマンは奇抜な変身店舗の開発に踏み切ったのか。最大の狙いは「ワークマンとワークマンプラスの商品が同じである」ことを目に見える形でアピールしたかったからだ。
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