JR西日本が、子会社であるJR西日本SC開発(大阪市)傘下の複数のショッピングセンターを顧客に横断利用させるスタンプラリーキャンペーンを、2020年3月6日から29日まで実施中だ。一見すると単なる集客キャンペーンだが、さにあらず。実は将来のデータ活用まで見据えた、グループにおける本格的なデータドリブン施策の第1弾という位置付けだ。
JR西日本グループでは、原則的に傘下の複数ブランドのショッピングセンター(SC)がそれぞれ、ポイントカードを発行する形を取っている。例えば、大阪ルクアなどで使える「ルクア」、天王寺ミオで使える「天王寺ミオ」、和歌山ミオで使える「和歌山ミオ」、プリコ三宮やピオレ明石などで使える「ジョイワン」、京都駅前地下街で使える「ポルタ」などである。しかもこれらのポイントカードは、相互に利用できない。ポイントをためたいユーザーは、利用するSCごとに異なるポイントカードを取得する必要があった。
ユーザーの利便性を考えても、グループ全体で顧客データを収集・分析することを考えても、これではあまりに使い勝手が悪い。そこで19年9月、傘下のSCの既存ポイントを共通ポイント「WESPO(ウエスポ)」に交換し、まとめて利用できるようにしたアプリ「WESPO」の提供を開始した。
ユーザーは、手持ちのポイントカードのカード番号などをWESPOのアプリに登録すれば、プラスチックカードを持ち歩かず、アプリ上にバーコードを表示して、これまで通り、SCでポイントを得たり、使ったりできる。また既存の各ポイントを共通ポイントWESPOに交換して使うこともできる。WESPOに交換すれば、例えばルクアでしか使えなかったポイントが、ミオやポルタでも使えるようになるというわけだ。
データを使って訪問を推奨するSCをレコメンド
ここまでポイントカードの“活用基盤”を整えたうえで、JR西日本は20年3月6日、複数のSCを顧客に横断利用させるスタンプラリーキャンペーンを、満を持して開始した(同年3月29日まで)。
ユーザーがWESPOアプリのトップ画面からキャンペーンにエントリーすると、スタンプシート画面に切り替わり、3種類のスタンプ対象SCが表示される。ユーザーが示されたSCを訪れ、利用する際にWESPOアプリを提示すれば、スタンプを得られる。スタンプを2つまたは3つ集めれば、もれなく100または200WESPOポイントが得られ、併せて、抽選により1000または2000ポイントも得られるというものだ。示されたスタンプ対象SCのポイントカードをユーザーが持っていない場合、新規に登録する必要がある。
一見すると、スタンプによってユーザーをSCに誘導する単純な集客施策に見える。しかし、この施策の肝は、ユーザーがキャンペーンにエントリーした際に表示する3種類の対象SCにある。
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