働き方改革への不安を取り除く

 もっともテレワークやサテライトオフィスを導入するだけで企業が改革できるほど、話は単純ではない。上司や同僚から離れた場所で働くことに、部下の側は「上司が自分の働きをきちんと評価してくれているのか」という不安を抱く。一方で、上司の側も「部下はちゃんと働いているのか」気がかりだ。そこで管理職が物理的に離れた場所で働く部下をどう指導して評価すべきかマニュアルを整備するといった、ソフトの面での対策も進めてきた。例えば、部下の報告を待つのでのはなく積極的なコミュニケーションを取る心構えを、管理職にはあらためて求めている。具体的にはテレワークなどで働く部下ともテレビ会議や電話、社内SNSを使った1対1のミーティングで情報共有を密に行うといったことだ。

 さらにテレワークとサテライトオフィス導入の鍵はペーパーレスだという。20年中には顧客向けの契約書や請求書くらいしか紙の書類はないという状態を目指している。10年に本社を現在の場所に移す際には、部署間をさえぎる物理的な壁のない大部屋タイプのオフィスに変更。同社ではこうした取り組みを「時間と場所の自由化」と呼んでいる。

 様々な働き方改革の取り組みで、20年中に17年比で社内業務の作業量を半分に減らし、営業職が顧客対応に使える時間は2割増やすことが目標だ。社員にIT活用での作業時間削減効果をアンケートしたところ、年間(17年と18年の比較)で社員1人あたり平均月間6時間にもなったという。

社内の風通しの良さ=生産性を高める

 現在、同社が目指しているのがイノベーションを生み出す生産性の高い組織作りだ。そのためには部署間の業務の垣根を越えた情報共有や協力がより重要になる。

 そこで同社が活用に力を入れているのが社内SNSの「Slack」。しかし、日常業務に追われる社員は、なかなか新しいツールを使わない。そこで、2019年12月にはSlackを活用する全社イベントを開催した。約5000人いる全社員をランダムに5~9人のグループに分けて、非公開のチャネルで「自社の好きなところ、嫌いなところ」を議論した。

 狙いは2つある。1つは誰でも意見があるテーマについて書き込んでもらうことで、Slackの便利さを知ってもらうこと。そして、もう1つが組織の壁を越えて自由な意見を言える場を作り、より風通しの良い会社を作ることだ。Slackでの少人数グループによる議論実施後に、匿名でアンケートが実施され、経営陣に聞いてみたい質問が集められた。その回答もSlackを通じて行った。こうした努力もあり、同社のSlackアクティブユーザー比率は19年12月の時点で「イベント前の7割から8割に増加した」(Slack活用のイベントを担った同社の北川龍樹氏)。

 社内の連携を密にする取り組みと同時に進めているのが、外部との連携によってイノベーションを生み出すことだ。20年2月10日には東京・日本橋に新拠点「イノベーションベース」を創設。米国のシリコンバレーにあるスタートアップ支援企業とも連携し、新技術や新商材の発掘を進める。その密なコミュニケーションに役立つのが、同社にとって既に使い慣れたビデオ会議システムだ。同社の主力事業の1つは通信工事関連。20年の夏には川崎に技術センターを作る予定で、研究のメインテーマは5G関連となる。こちらでも社外との連携を重視している。

 同社は本社スペースとして東京・飯田橋のビルを12フロア借りていたが、それを郊外へのサテライトオフィス設置によって4フロアまで減らすことができた。節約したコストで、東京・日本橋や川崎のオフィスの賃料をまかなっている。働き方改革はコストの面でもイノベーションを高める取り組みに貢献している。

 時短から生産性の向上、新型コロナのような事業継続リスクへの対処までIT活用による「働き方改革」の効用は幅広く、今後さらに注目されていくはずだ。

NECネッツエスアイの本社。大型のモニターが並ぶ
NECネッツエスアイの本社。大型のモニターが並ぶ

(写真/NECネッツエスアイ)


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