日本橋上空に青空が広がり、東京都心に緑豊かな水辺空間が生まれる──。三井不動産が東京・日本橋で進める再生計画の本丸「水都再生」の青写真が見えてきた。ただ景観がよくなるだけではない。実は、商業、観光、ビジネスなど、あらゆる面で地殻変動を起こす可能性がある。

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首都高速道路の地下化に伴い、空を取り戻した日本橋川周辺のイメージ。幅約100メートル、長さ約1200メートルに及ぶ広大な水辺空間が都心に生まれる(三井不動産が発表した完成イメージより)
首都高速道路の地下化に伴い、空を取り戻した日本橋川周辺のイメージ。幅約100メートル、長さ約1200メートルに及ぶ広大な水辺空間が都心に生まれる(三井不動産が発表した完成イメージより)

 首都高速道路が地下に移設され、日本橋川上空に青空が広がる。水質が改善し、緑であふれる河川敷。水面(みなも)を多数の船が行き交っている──。完成時期は2035~40年。まだ遠い先の話だが、この1枚のパースは、三井不動産の日本橋再生計画が、“本丸”に突入したことを意味する。

 首都高地下化をにらみ、「八重洲一丁目北地区」「日本橋一丁目中地区」「日本橋一丁目1・2番街区」「日本橋一丁目東地区」「日本橋室町一丁目地区」の日本橋川沿い5区画の再開発が決まった。これにより、川べりを大きく拡幅できるようになり、東京のど真ん中に、幅約100メートル、長さ約1200メートルに及ぶ広大な水辺空間が誕生する。大プロジェクトの青写真が、いよいよ示された。

首都高地下化の事業計画図。このうち、日本橋川沿いの5つの区画で再開発が予定されている(第3回首都高日本橋地下化検討会配付資料より抜粋)
首都高地下化の事業計画図。このうち、日本橋川沿いの5つの区画で再開発が予定されている(第3回首都高日本橋地下化検討会配付資料より抜粋)

 敷地面積にして約6.7ヘクタール(約2万坪)。川に面して商業店舗や広場、オフィス、ホテルなどを複合的に開発する計画で、新たに生まれる建物の延べ床面積は約122ヘクタール(37万坪)に及ぶ。水辺にはアートを並べ、大規模なフェスティバルを開催する予定だ。

 重要なのは、この水辺空間が東京駅から徒歩圏内にある点にある。現在は建物が密集し、川沿いに人が歩けるオープンスペースはないが、「再開発が出来上がってくるにつれ、東京駅を出て日本橋川に沿って歩けるようになれば、『東京駅周辺ゾーン』として街が一体化してくる」。三井不動産日本橋街づくり推進部長の七尾克久氏はそう読む。

 つまり、東京駅と日本橋が一つのエリアになる。この東京駅周辺と日本橋を結ぶルートを三井不動産は「都心ウォーカブルネットワーク」と名付けた。

東京駅から日本橋川沿いに生まれる「都心ウォーカブルネットワーク」
東京駅から日本橋川沿いに生まれる「都心ウォーカブルネットワーク」

 ただ、歩ける街になるだけではない。日本橋は、複数の移動手段を1つのサービスとしてつなぐMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を実現する最右翼の候補地になり得る。日本橋の欄干の真下に、東京駅から最も近い船着場があるからだ。

 1923年の関東大震災まで日本橋には魚河岸があり、日本各地から船でさまざまな物資が運ばれてきた。今も日本橋船着場をハブにすれば、羽田空港、台場、芝浦、晴海、豊洲、浅草方面がつながる。観光や生活動線として古くて新しい人の行き来が生まれる。

 実際に19年7月末から8月上旬にかけて、東京都が脱“痛勤”の実証実験を行い、日本橋船着場と朝潮運河船着場(勝どき桟橋)を小型船で結んだ(関連記事「『都心で船通勤』は意外にラク MaaSの一角を担う可能性も」)。

三井不動産が考える日本橋起点の舟運ネットワーク。羽田から浅草、品川方面へと縦横無尽にルートが延びる
三井不動産が考える日本橋起点の舟運ネットワーク。羽田から浅草、品川方面へと縦横無尽にルートが延びる

 東京は都心部ほど鉄道駅が密に存在し、日本橋船着場の目と鼻の先には、日本橋駅や三越前駅がある。さらに東京駅まで川沿いに歩けるようになるとすれば、「船を降りて列車に乗り換えたり、レンタサイクル、タクシー、バスを使ったりと、いろいろな移動ができる。交通網の結節点である日本橋だからこそ可能だ」と七尾氏は語る。都心ウォーカブルネットワークと舟運ネットワークを重ねれば、日本橋は水陸両面で東京の大動脈を担うというシナリオだ。

再生計画は「第3ステージ」へ

 2004年のコレド日本橋開業を皮切りに本格化した三井不動産の日本橋再生計画は、この日本橋川沿いの開発をもって「第3ステージ」という名の新局面に入った。

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