この10年余りで、街の姿が大きく変わったのが、東京・日本橋だ。三井不動産が中心となり、街のシンボルとなる商業施設やホテル、交流拠点を次々と整備。閑古鳥が鳴いていた街は、完全に息を吹き返した。三井不動産が次なるフィールドに選んだのは、かつての行政区一つ分。超広域エリアを、いかにして再生するのか。そのビジョンをキーパーソンに聞いた(全2回)。

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日本橋大伝馬町のホステル「CITAN」。日本橋エリアの東側ではここ数年、個性的な店が次々と進出。ニューヨークのブルックリンのような新陳代謝が生まれている
日本橋大伝馬町のホステル「CITAN」。日本橋エリアの東側ではここ数年、個性的な店が次々と進出。ニューヨークのブルックリンのような新陳代謝が生まれている

よみがえる“日本橋区”

 銀座、日本橋、京橋、月島、勝どきなどを擁する東京都心の中央区。1947年に中央区が誕生する前、このエリアには「日本橋区」とくくられた行政区画があった。

三井不動産が再生を目指す旧日本橋区エリア(三井不動産が運営する情報サイト「まち日本橋」から抜粋)
三井不動産が再生を目指す旧日本橋区エリア(三井不動産が運営する情報サイト「まち日本橋」から抜粋)

 日本橋室町、日本橋本町、日本橋人形町、日本橋茅場町など住所に日本橋を含む21町と、東京駅前の八重洲1丁目を含めたエリアで、区域面積は約270ヘクタール。東京ドームが58個ほど入る広大なフィールドを再生する。三井不動産は19年8月、そんな大胆な構想を発表した。

 キーワードは「GREATER日本橋(グレーター日本橋)」。首都高速道路が走る昭和通りを境に旧日本橋区の西側をWESTエリア、東側をEASTエリアとし、全体を「グレーター日本橋」と命名。個性が異なる各エリアの特徴を生かし、一体的な街づくりに挑む。まさに旧日本橋区を現代に復活させるような試みだ。

三井不動産は昭和通りを境に旧日本橋区をWESTとEASTに分割。「グレーター日本橋」として一体的な再生を目指す
三井不動産は昭和通りを境に旧日本橋区をWESTとEASTに分割。「グレーター日本橋」として一体的な再生を目指す

 「WESTエリアとEASTエリアは、ニューヨークで言うミッドタウンとブルックリンのような関係性。個性の異なる両エリアが一体となって存在することが、最大の強みだ」と語るのは、三井不動産日本橋街づくり推進部長の七尾克久氏。ミッドタウンはタイムズスクエアやエンパイア・ステート・ビルディング、五番街、ロックフェラー・センターがあるニューヨークの中心地。そしてブルックリンは、新進気鋭のアーティストやクリエイターが集い、個性的なカフェが軒を連ねるトレンドの発信地だ。

オフィス街→一大商業ゾーンに

 日本橋は三井グループ発祥の地。三井不動産はこのおひざ元で「日本橋再生計画」を旗揚げし、息つく間もなく、大規模な再開発を推し進めてきた。

 2004年、日本橋駅の北側にコレド日本橋を開業したのを皮切りに、10年に「コレド室町(現在のコレド室町1)」、14年に「コレド室町2」「コレド室町 3」をオープン。コレドの裏手には風情ある石畳の路地を整備し、福徳神社を再建。憩いの広場となる交流拠点「福徳の森」も整備した。

 05年には日本橋三井タワーが完成し、上層階に日本初進出となる「マンダリン・オリエンタル東京」を誘致。18年にはレストランとオフィス、三井ガーデンホテルからなる複合ビル「OVOL(オヴォール)日本橋ビル」が誕生した。第1ステージ、第2ステージと期間を区切りながら、街のシンボルとなる開発を一つずつ形にし、オフィス中心だった街をこの10年余りで、東京の一大商業ゾーンに変貌させた。

 今やコレド室町1~3とコレド日本橋の4館だけで年間約3000万人を吸い寄せる。19年には5番目のコレドとして「コレド室町テラス」が産声を上げた。2階には台湾のライフスタイルストア「誠品生活」が日本初上陸し、さらに集客力を増した。三井不動産によると、コレドを訪れる客層の半数以上は30~40代。来街者が若返り、周辺の駅の乗降客数は飛躍的に増えた。「街はかつてのにぎわいを取り戻した」と七尾氏は自信を込めた(関連記事「三井不が主導する『日本橋再生』 東京の新たな核に」)。

「グレーター日本橋」構想について語る、三井不動産日本橋街づくり推進部長の七尾克久氏
「グレーター日本橋」構想について語る、三井不動産日本橋街づくり推進部長の七尾克久氏

街を変えた1軒のホステル

 しかし、これまでスポットライトを浴びてきたのは、もっぱらWESTエリアだった。名橋・日本橋を挟み、日本橋駅と三越前駅、新日本橋駅を南北に結ぶエリアである(上の地図参照)。三越、高島屋の老舗百貨店があり、コレドや各県のアンテナショップが立ち並ぶ。華やかではあるが、それは日本橋の一面にすぎない。

 実は今、変貌著しいのは昭和通りを越えて東側のEASTエリアだ。七尾氏がブルックリンと評するように、個性的なカフェや実力派の飲食店が毎月のようにオープンし、スタートアップの進出も著しい。“ブルックリン化”は今、始まったわけではない。実は水面下で、着々と布石が打たれていた。

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