イベントなどで導入されるプロジェクションマッピングを、インバウンド狙いで空間デザインに活用した例が東京・築地の日本料理店「魚月(なづき)」だ。2019年7月にリニューアルして店内を「海中」のイメージに変えた他、20年1月には「鶴の恩返し」「竹取物語」をテーマに映像と創作料理に挑戦。外国人客が1割以上になった。今後は3割を目指す
ムーンライト(東京・中央)が運営する日本料理 魚月の店内に入ると、154席のうち94席を占めるメインホールのテーブルを取り囲むように壁や天井、床までもプロジェクションマッピングによるアニメーション映像の「海中」が視界に広がる。魚や岩などの映像を目で楽しむだけでなく、魚を手で触ると花びらが舞ったり床を歩くと水の波紋が広がったりといったインタラクティブな仕掛けもある。
さらに「鶴の恩返し」「竹取物語」をテーマにした創作料理の「日本昔話コース」も用意。話の流れに応じたさまざまなイラスト画像を壁に投映し、音楽も流れる。同コースのメニューは話の内容に沿っており、昔話の世界を目と舌で味わえるようにした。ここまでプロジェクションマッピングを生かし、多くの工夫でお客が楽しめるように演出している例は珍しい。映像・音響の設備投資額は明らかにしないが、大がかりな空間づくりに出費を惜しまない理由はインバウンド需要のさらなる開拓だ。
魚月は築地場外市場の近くにある。多くの外国人が訪れる好立地のはずだが、商業施設内の地下1階にあり、同場所で18年末まで営業していた前身の料理店「築地 竹若」は固定客ばかりで外国人の集客につながりにくい状況だったという。
そこで19年7月、築地ならではの厳選された食材と外国人が注目しそうな映像演出にこだわった店に変えた。20年1月に日本の昔話をテーマにしたコースを作った理由も、外国人の集客をより強化するためだ。「築地という伝統的な地域とプロジェクションマッピングの最新技術を融合させることで、今までにない新しい空間を作り上げたかった」(ムーンライトの山本健太社長)。
内装の改修に際しては、公共施設や飲食店などの空間プロデュースを手がけるZNEM(ジネン、東京・港)代表の三好和彦氏に監修を依頼した。三好氏は魚介を連想させる海をテーマにプロジェクションマッピングを構想し、設計やデザイン、施工管理を担当。映像の制作はジュリアジャパン(東京・新宿)が行った。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー