星野リゾート(長野県軽井沢町)が、20年6月から初となるホステル業態の運営に乗り出す。場所は川崎市で、同社の都市型シティーホテルと同じ「OMO」のブランドを冠する。その独特なブランド戦略や価格戦略には、近年勢力を拡大している外資系ホテルに対する「アンチテーゼ」が込められている。

星野リゾートは2020年6月、同社初となるドミトリー「星野リゾート OMO3 東京川崎」をJR川崎駅(川崎市)から徒歩7分の場所にオープンする(パース提供/星野リゾート)
星野リゾートは2020年6月、同社初となるドミトリー「星野リゾート OMO3 東京川崎」をJR川崎駅(川崎市)から徒歩7分の場所にオープンする(パース提供/星野リゾート)

 高級旅館「星のや」や温泉リゾート「界」、ファミリー向けリゾート「リゾナーレ」など、観光地で宿泊施設を展開してきた星野リゾート。16年3月には北海道旭川市の老舗シティーホテル「旭川グランドホテル」を買収し、18年4月に「星野リゾート OMO7(オモセブン) 旭川」にリブランドして、都市型観光ホテルの運営に本格参入した。18年5月には2号店となる宿泊特化型の「星野リゾート OMO5(オモファイブ) 東京大塚」(東京・豊島)をオープン。22年4月には大阪市浪速区の新今宮、23年春には山口県下関市での開業を控えている。

 「新しいスタイルの都市観光ホテルブランド」をうたうOMOブランドの新たな展開として、星野リゾートとしては初となるホステル形態の宿泊施設が20年6月11日、神奈川県川崎市にオープンする。名称は「星野リゾート OMO3(オモスリー) 東京川崎」。全227室のうち137室がカプセルホテルのような形態のドミトリー「NEDOCO Pod(ネドコポッド)」で、トイレとシャワーは共用だ。これまで運営してきたシティーホテルや宿泊特化型ホテルとはサービスレベルが大きく異なるにもかかわらず、同じOMOブランドを冠する異例の展開。その背景には、ブランドを増やしすぎている外資系ホテルに対するアンチテーゼがあると、星野佳路代表は話す。

上下2段式のドミトリー「NEDOCO Pod(ネドコポッド)」。ベッド幅は120センチメートルのセミダブルサイズ(パース提供/星野リゾート)
上下2段式のドミトリー「NEDOCO Pod(ネドコポッド)」。ベッド幅は120センチメートルのセミダブルサイズ(パース提供/星野リゾート)

 例えば世界最大手のホテルチェーンである米マリオット・インターナショナルは20年、「エディション」「JWマリオット」「アロフト」「ACホテル・バイ・マリオット」「フェアフィールド・バイ・マリオット」という複数の新ブランドホテルを日本に上陸させる(参考記事「34施設も新規オープン 道の駅までホテルに変える米マリオット」)。このように数多くのブランドを展開する外資系ホテルの戦略について、星野代表は「明確なターゲットが見えないのにブランドを増やしている。マーケティング戦略に基づくものではない」と批判的だ。外資系ホテルは建物オーナーからの運営受託によってビジネスが成り立っているため、同じ都市に複数の施設を展開するには、異なるブランドを冠して自社競合を減らすことが求められる。事業者の都合にすぎず、消費者にとって違いが分かりにくいと星野代表は話す。

 一方で外資系ホテルは、価格帯によるブランド分けは明確。例えばマリオットブランドで見れば、最高級のJWマリオット、高級の「マリオット・ホテル」、中級の「コートヤード・バイ・マリオット」といったような具合だ。しかしこれも日本にはそぐわないと星野氏。「日本では同じ消費者が、高級旅館やホテル、ビジネスホテルを利用シーンに応じて使い分けている。欧米的な階層消費は当てはまらない」(星野代表)。

 そこで星野リゾートでは、都市への観光客をターゲットにする宿泊施設はすべてOMOブランドとし、サービスの違いは数字で表すことにした。数字が大きいほどサービスの幅が広く、少ないほど狭くなる。宴会場や本格的なレストランを備える旭川は「7」、宿泊特化型の東京大塚は「5」だ。今回加わる東京川崎は「3」。あえて、1、2を使わなかったのは、将来的にホステルよりさらに簡素なサービスの宿泊施設を展開する自由度を残すため。具体的な構想があるわけではないが、都市型のキャンプ施設や、大部屋で雑魚寝するような施設があってもいいという。

観光客をターゲットにする都市型施設はサービス内容によらず「OMO」ブランドで展開すると話す星野リゾートの星野佳路代表
観光客をターゲットにする都市型施設はサービス内容によらず「OMO」ブランドで展開すると話す星野リゾートの星野佳路代表

 OMOは、施設を中心とした街全体をひとつのリゾートとして捉え、施設の外で楽しんでもらうコンセプト。ホテルスタッフが「OMOレンジャー」として周辺の魅力を開拓し、ツアー形式で案内する「Go-KINJO」サービスを売りの一つに据える。周辺の飲食店などで楽しむ分、宿泊費を抑えたいというニーズはあると見る。ドミトリーは1泊で税別2818円から。宿泊料金の高止まりが続くホテルと比べるとリーズナブルだ。

「星野リゾート OMO7旭川」では、OMOレンジャー(写真右の人物)が近隣のスーパーマーケットを案内する企画が人気。参加者は平均して2000円ほど買い物をしていくという(写真提供/星野リゾート)
「星野リゾート OMO7旭川」では、OMOレンジャー(写真右の人物)が近隣のスーパーマーケットを案内する企画が人気。参加者は平均して2000円ほど買い物をしていくという(写真提供/星野リゾート)

 価格戦略も、外資系をはじめとする多くのホテルチェーンとは一線を画する。業界では、需給に応じて価格を変動させるダイナミックプライシングが一般的となり、東京都心では、繁忙期にはビジネスホテルでも3万円を超える値付けが珍しくなくなった。OMO3 東京川崎では、ドミトリーで上限6000円程度、鍵のかかる個室タイプでも1万円以下に抑える予定だ。

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